歩く(2)

まさか歩く速さの話が後に参照されようとは思ってなかった.

何かに急かされているような、そんな……。

智「心境の変化ってやつなのかな?」

(中略)

智「あれ……?」

色々と考えていたせいか、気づかないうちに歩くペースが早くなっていたらしい。

まるで誰かの影響を受けたように背筋を伸ばし、冬の朝の寒さに負けずきびきびと歩いている。

---誰の影響?

智「そんなの明白だよね……」

でも……。

どうして“彼女”なのだろう?

歩くのが速い女の子から影響を受けるということ.それでずっとゆっくりだったこの人が歩くの速くなるというのは信じられない変化だったのだけど,「あれ……?」という不意に気づかれる感じが先にあるのだったら,なるほど判る.たまたま自分が早足になっていたとき,そこからの連想で自分の気になっている女の子のことが思い浮かぶのである.

七つのふしぎの終わるとき 初回限定版

七つのふしぎの終わるとき 初回限定版

ギャルゲーの女の子が可愛いというのはふつうのことですが,グエンのそれは度を超しているように思われました.

歩く

足を右左右と交互に出すのが歩くということではないらしい.姿勢が悪い,もっと胸張って歩けとか,男なんだから外股で歩けとかいろいろ言われます.顔あげて,あご引いて,いや,どっちだよ.

年末に体を壊してから歩く量が減っていて,そうすると歩き方を忘れたということはないだろうけどたまにちょっと歩くと何か変な足の出し方をしているらしく,すぐに付け根のあたりが痛くなる.姿勢が悪いのが影響してるのかもしれないし,もう,きっとなにもかも出来が悪い.

歩き方に気がつくのは観察で,その人をちょっと離れたところから見ようとしたときに姿勢悪いなぁとか思う.隣でいっしょに歩いてるとそういうのは見えにくい.だからどうか,僕と歩くときは僕の隣を歩いてください.

たとえば遠近深咲とふたりで登校するとき.

深咲「ほら、ゆっくりしてないで、もっときびきび歩く」

隣で歩いていると第一に気づかれるのは速度のほうである.

ふと気がつくと、遠近の歩幅は俺と同じゆっくりとしたものに合わせてくれていたが、なにも言わずにいる。

離れて見るときの歩き方をああしろこうしろは一方的であるが,ふたりが近いときの歩法とは互いに調整される類のものである.

たったこれだけのことであるが,歩くということの善に触れたように思えて嬉しかった.

七つのふしぎの終わるとき 初回限定版

七つのふしぎの終わるとき 初回限定版

相変わらず画面にかぶりつきで描線にうっとりしています.前作で丸くなった顔の輪郭にまた角度がつくようになって,斜めから見るときのその筆遣いが絶妙.たいへんどきどきします.絵柄を意識して変えてるようだけど,「そして明日の世界より――」から「秋空に舞うコンフェティ」そして今作まで次第にCGの解像度が精細になるなか,ようやくこの角度を表現可能なドット数に辿りついたのではないかと思えます.

グラフィックデザインも美しく,気が利いています.CGというのはほんとう,心奪われるものだと思います.

宵闇へ.(2)

明るい昼間から影の差す夕方へかけて,気持ちの水準が変化するのに任せて話すんだふたりは.

初めて会った日からこんなでしたね.

晴樹「ああ、また明日」

玄関口で琴宮と別れ、今日の夕飯は何にしようかと考えながら自分のアパートへと向かう。

美冬「待って、私も行く。駅前でマンガ買いたいから」

晴樹「うおっ、何だよお前、爆睡してたんじゃないのか」

美冬「ふん、今目が覚めたのよ」

買い物をいつもの口実にして,夕闇に溶け込んで話せるような機会を設けているのだ.

美冬「ねぇ、あんたさ」

晴樹「ん? なんだ?」

美冬「お姉ちゃんのこと……好きなの?」

晴樹「はあ!?」

会ったその日から直球である.

晴樹「それより一つお前に報告がある」

美冬「ん? なんだよ」

晴樹「俺、悪いけど今日からお前のお友達になったから」

美冬「はあ?」

お返しとばかりにこちらも直球である.立場を入れ替えての類似したやり取りが,ふたり通じ合えてるかのような調子を作り出していて心地よい.

ラブラブル~Lover Able~

ラブラブル~Lover Able~

それにしても,帰り道をともにした相手というのは記憶の深いところへ残るように思います.

宵闇へ.

なんでもないこと,なんでもない時間をふたりで過ごして,その去り際であるとか日が落ちる少し前,終わりが近づいて気持ちがぎゅっと詰まってきたら打ち明け話の時間だ.静かな空気のなか声を溶かすように,一日が夜へ吸い込まれる勢いを借りて.

今日はそういう日になるだろうな,っていう流れがあるよね.

きっかけは家族の話で,私とお姉ちゃんじつは義理の姉妹なんだ,とか.大きいようにみえて,でも本当に打ち明けたいのはその程度のことじゃないんだよなぁ.

以下,晴樹が千夏の家から帰るところ.

美冬「待って、私も行く」

晴樹「ん? 買い物か?」

美冬「うん、駅前に漫画買いに行くの。今日新刊が出てるはずだから」

晴樹「そっか」

美冬とその姉千夏の恋人である晴樹がふたりで居てふたりで話している様子は何度も描かれてきた.この日は昼のうちに彼女らが姉妹になった経緯が明かされた.帰りしなにまたふたりだけになりたいと言い出したところで,これまでふたりで居たことの,ついに行き着くところがあるような予感が高まる.

晴樹「なあ、昔の千夏の話、聞かせてくれよ」

晴樹「お前が出会った当初の千夏で良い、自分の知らない彼女の姿って……結構男としては興味が湧くっていうか……」

美冬「うわ~、悪趣味なやつ~」

美冬がそっと空を見上げる。

そこで千夏の話を始めるはずであるが,実際のところは美冬が千夏に対してどんなことをしてしまったか,そして千夏が美冬にどんなことをしてくれたか,という美冬の打ち明け話になっている.

この日は打ち明け話の勢いのままふたりとも気持ちが昂ぶってしまって,帰宅後に晴樹が美冬にメールしたら美冬からは電話で返事がくる.で,どういうわけだかそのまま午前0時に美冬と千夏の父に会って娘さんへの気持ちを吐露する算段までつけてしまう.どんな日だよそれ.深く降りてゆくような,ちょと足滑らせて落ちてもゆくような感情の日だった.

ラブラブル~Lover Able~

ラブラブル~Lover Able~

美冬とたくさん話をすることができて幸せな一日でした.

愛しい.愛しい.愛しい.