ひとつ飛ばし結婚

恋愛を乗り越えてゆく前進のおはなしでした。乗り越える、あるいは、飛び越えるというほうが僕の気分には合います。

恋愛を飛び越えるための結婚でした。大好きで大嫌いでままならない恋愛だったから、恋愛なんて枷は後ろへ置いてゆこう。ジャンプだ。運命だと思えるのであれば前へ進め。

恋なんてしたくないから結婚しよう。それはゆうほど簡単な提案ではなくて。姫野永遠が宮坂終との長きに渡る苦悩の果てに至る境地です。恋なんてもうお断りでした。

宮坂終が姫野永遠を救いたい気持ちが彼の視点からはずっと描かれるのですが、天は自ら助くる者を助く、でしたっけ、姫野永遠が結婚という提案を自分でひねり出したことは彼女の未来を積極的に変えていたと思われます。

姫野永遠からの提案といえば、都築はるか、佐倉井真響というふたりの女の子への分岐も、彼女からの提案であったように思います。彼女の抱いていた白い本は、彼女の感情の失われてゆくことを示すものではなくて、いまだ書かれぬ宮坂終の3冊目の本であって、そこに埋めるべきおはなしを姫野永遠は宮坂終へと示していたのではないでしょうか。そしてそのことも、最後のひとりの宮坂終が姫野永遠へ向かう力となっています。

結婚が突拍子もない、遊びみたいに感じられるものだったとしても、姫野永遠が粘り強く導いたそのアイデアに僕は惹かれました。恋愛を飛び越えるためのレトリックとしての結婚。そして、夏の青空への飛翔がふたりを待っています。