賀茂川八景

なにしてんのん? 堤防に上がってくるなんて珍しい.

つがいばかり見かける.この前はもっとおおきな群れだった.あるとき,先頭の鴨が飛び立って,ひと群れがそれに続いて,半分の鴨がそのまま残った.それでみんな同じだと思っていた群れがじつは二つだと判った.

ときどきサギが立っている.今日ははじめて,獲物を求めて忍び足しているのを見た.

ぬき足,さぎ足……

川面に嘴を突っ込んだが,はずれ.二度失敗したあたりで,釣れますか? と声を掛けそうになったが,三度目であたり.なにか小魚のようなものをもぐもぐしていた.

賀茂川の段差は,遠くのものほどそれと判らなくなる.日が落ちてくればなおさら,まっすぐ流れてゆくように見える.歩いていって,近くなってはじめてそこにすとんと落ちる滝があると判る.この人工の段差がなかった頃は,賀茂川の流れはもっと急で,雨が降った次の日などは鴨たちも凄い勢いで流れていったことだろう.今も夕闇の賀茂川の流れは滑り台のようで,そんな風に暗くて速い.速く見える.

賀茂川の水と賽の目となんとやら.北大路タウンのてっぺんからは,比叡山がいつもより近く見えた.偉容,と言ってもいい.あんなに近くて高いところに自分の意に沿わぬ人々がいたとすれば,京の為政者にとって相当プレッシャーだったろうことが判る.都のすぐ傍に,立てこもるにはおあつらえ向きの場所があったというのも面白い.

コメントを残す