おやつのゆくえ

……白玉に大福,落雁,お煎餅.みんなお米を使ったおやつだ.昭和のはじめごろ,お米の用途や保管を考えるところからこの国の食品研究は始まった.食品というのは食べものが生産地から離れた先のことを全て取り扱う.道中の梱包や運送,倉庫での保管,市場から小売り,家庭での食をめぐる暮らしまでがみんな食品の関心事だ.

食卓が大気圏の外へ飛び出せば宇宙も食品の領域となるだろう.たとえ宇宙の真ん中でも滅びの日まで食べ続けるんだ.

おそらくは,食卓から宇宙まで,というのが手がかりだ.海晴姉が就職を決めたので,私はちょっと安心してしまった.おかげで家族のことを考える時間がある.おやつがどこから来てどこへ行くのかを考える余裕もある.

ええじゃないかの赤福餅が好きだった.近鉄沿線ならたいてい買えるものだから,伊勢名物というよりは私たちのおやつだった.関西からのおみやげが楽しみだった.どの駅の売店で買うように,と麗が注文を付けるのだった.

そして,それは遠いところからやってくる.生菓子の流通には驚かされることが多い.

小さい子たちの誕生日にはケーキを焼いてやるものだが,大人の誕生日にはお店のケーキだ.ヒカルから上は大人のケーキにすると決めた.

だけど,この前は自分の誕生日をうっかりしてケーキの予約を忘れていた.数の出ないホールケーキは作り置きがあまりないものだ.ネーム入りのバースデーケーキとなるとなおさら予約が必要になる.いくつか当たってみると回転のよいイートインのケーキショップではすぐにバースデーケーキを出せることが判った.30分で出来るって言うんだ.受け取りに行ってみると狭い店内に行列が出来ていて,パティシエのお兄さんたちがせくせく働いていた.座席の数よりもパティシエの数のほうが多いように見えて,不思議だった.

人の数が多いほど,おやつは回るんだ.人から人へ,あるいはたくさんの人が動かす大きなものの手によって,

100万人いればきっと,宇宙にだって届く.

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