執事が姫を選ぶとき
http://www.peassoft.com/game11/index.html
SNOWから10年。一緒に仕事されてることは何度かあったものの、神野マサキさんと望月JETさんのご両名を中心としたライティングは久々という感じがします。
待っておりました。
7周年の頃の日記。
執事が姫を選ぶとき
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SNOWから10年。一緒に仕事されてることは何度かあったものの、神野マサキさんと望月JETさんのご両名を中心としたライティングは久々という感じがします。
待っておりました。
7周年の頃の日記。
「真の幸せ」(イモウト)は恋から作る,ってパッケージ裏に書いてあるわ! そのまんまだ…….
記憶や記録のない他人から始まる生き別れの妹が,どんなものか判らないその,妹,っていう言葉の器を満たしてくれる何かを求めるときに,いったん恋人のような関係を経由する,というのは妹スマイルの夏希編でも採られた手順だった.
しかし,生き別れでなくたって,ふたりの未知の関係が目指されるときに,本作ではその関係のことを妹と呼ぶわけなんだけど,それは恋やら肉体関係を経て,そうして妹へと近づいてゆくのだ.
聡里「でででも……ちまちゃんが『昨夜妹にしてもらった』って……」
会話としてはギャグの流れであるが,初めて身体を重ねることが「妹にしてもらう」と表現されるのには独特のズレを感じる.たしかに,妹が恋から作られている.
そういうわけで,恋人を経て,妹へ辿り着いた地点でいったん幕を閉じる美優樹さんの話はイモウトノカタチらしいなぁ,と思えるので気に入っています.
「初めて会ったときから……再会したときから、兄だなんて思ったことなかった」
もうひとりの妹は美優樹の対極に立つんだけど,その立場を採るにあたって,恋人であるミータとの関係を伴ってる.女の子が妹を目指すことなしに男の子と身体を重ねるには特殊な理由を必要とするのが本作のあり方でした.
生き別れの兄妹を探すことが理想の恋人を探すのにも似た水準に置かれ,男の子と女の子が兄妹という言葉でもって互いの間柄を測ってゆくお話.
生き別れの兄妹といえばふつうは血縁上の兄妹を指すと思うけど,記録も記憶もない,まともな手がかりの失われた状態で捜索する場合は何を頼りにできるだろう? どうしたら妹だって判るの? 妹ってどんなの? って考え始める.
雪人「……兄弟って、なんなのだろう……?」
血の繋がり? 連れ添ってきた時間? お互いの感情?
それとも、別の何か……?
血縁はなくても一緒に育ったのだったり,本当の兄や妹を代行するものだったり,単に妹みたいな気がする女の子だったり,兄みたいな気がする男の子だったり,恋人の一種だったり,あるいは片方が背が高くて片方が背が低いという程度のことかもしれなくて.
雪人「俺、今回のことでよくわかったことがあるんだ」
雪人「妹だと思って見ると、年下の子はみんな妹に見える」
むちゃくちゃだ! 前途多難の妹探しである.周りの女の子にも訊いてみるよ.
雪人「みんなは俺のこと、兄だと思えたりする?」
昼食を食べにきたらしいみんなにも聞いてみた。
美優樹「年上だし、私の境遇を考えると可能性はゼロじゃ無いとは思うけど、それを裏付ける情報が無さ過ぎだよね……」
静夏「残念ながら美馬くんは、お兄さんって柄じゃないかな」
聡里「自分は美馬先輩は素敵なお兄さんだと思う、から……
もしそうだったらいいなって……」
三者三様の答えが返ってきた。
雪人「ここにいるみんなは、災害で兄弟・家族と離れ離れになってしまっている」
雪人「そして、家族との再会を求めているはずなのに、俺が兄弟かもしれないと感じるのは二人だけ」
雪人「これはどういうことだろう?」
戸籍に頼ることができない場合,兄の要件は年齢かもしれないし,男の子の性格が評価されるかもしれないし,女の子のほうの気持ちが大事にされたりもする.
妹の形も兄の形も不定形だ.しかし,そのなかにいくつかのポジションを見つけてゆくしかない.
ただ千毬だけは、ずっと兄妹のように暮らしてきたからか、考えが読めるからか、兄妹かもしれないとは思えない。
『かもしれない』じゃなくて、『ようなもの』って確定しているからかもしれない。
義理の妹だと思って一緒に暮らしてきた千毬のことは,生き別れの実の妹かもしれない,とは思えない.そんな風にひとつひとつ切り分けてゆくのだ.
前作,ヨスガノソラは,同じ学年でありながら互いの間柄を測るときに兄弟や姉妹という関係が持ち出されがちなお話だった.春日野穹と悠の双子,天女目瑛と渚一葉の異母姉妹,そして極めつけが留年している中里亮平だった.イモウトノカタチの雪人も同じで,年上だと思うか,同学年だと思って付き合うかを迷い,その都度選びとる余地があって,年上だと思えばお兄ちゃんであるような気がするかもしれないし,またある時は同じクラスの恋人であるように思える.
そんなふうに,妹という関係を選び取ることもできる.
あやか「でも、もし本当の妹さんが見つかったら、どう言い訳する?」
雪人「そっ、そりゃ……お前の双子だよとか、お姉さんだよとか……」
あやか「ふふっ、そんな調子だと、雪人が妹だって思った女の子はみんなあたしの妹になっちゃうじゃない」
厳密に突き詰めればギャグになってしまうけれど,そのときその場のふたりの関係を結ぶために妹は都度立ち現れる.
男の子と女の子,女の子と女の子の,ふたりのある瞬間の関係をとらえるためには兄妹姉妹の形を参照する,という執着をイモウトノカタチはヨスガノソラから引き継いでいる.あまつさえ,そこにロボットが加わる.
ミータ「私の灰色の脳細胞がビビっと来るしたです。
私も『お兄ちゃん』と呼ぶです」
イモウトノカタチ全体を眺めると,同学年または年下の人間の女の子は全て妹的であり,素朴に恋人と言って良いのはロボットの娘さんだけ,という極まった構成である.偶然みたいに言い出した『お兄ちゃん』から,生き別れの妹ではあり得ないロボットの娘さんのお話が始まって,恋人として妹の形に組み込まれてゆく.話の落ち着く先としては,あやかアフターストーリーで四姉妹のようになるのが好み.
それはそうとして,静夏さんと聡里さんがとても素敵なので立ち絵をガン見でした.
瀬名美優樹さん.我慢もしがちだけど,なにが問題なのか不満なのか言うときははっきりと言葉にしてくれるありがたい人.雪人さん嫌いじゃないけど,美優樹さんの言葉を半分も聞いてない点に関しては駄兄というしかない.やわらかいけど芯もある,しなやかな声の持ち主.
美馬千毬さん.たいへんかわいい.通常,恋人の置かれる位置に妹の置かれるところがこの作品の倒錯めいたところと冗談の種になっています.「言い方が悪かった。恋人じゃなくて……妹、そう、千毬を本当の妹にするよ」「ナンパなんてしてないだろ。彼女じゃなくて妹になって欲しいだけなんだから」冗談で茶化しつつ,妹の意味をスライドさせることで関係が築かれてゆきます.
澄稀あやかさん.駄兄であるお兄ちゃん1号の代わりにお兄ちゃん2号として雪人さんが立つ.1号との和解の道は周到に敷かれているように思います.
MeTAさん.どういうタイプのロボットであるか,事前に予想して臨みました.だいたいのところはマスター=スレーブ型だと思っていたので,だいぶ大きく外しました.ランニングの好きなロボットをどう見るか,ということでした.
清宮真結希さん.ゲームプレイマニュアルを開いた瞬間から,ある一つの予感とともに,この人の元に辿り着くのを楽しみにしていました.結果として,およそ,辿り着けたのではないかと思います.
藤咲静夏さん.招き猫のような立ち絵のお姿に痺れます.
漁聡里さん.マイ生き別れ妹.
電話にて.この中に1人妹がいるわけだから生徒会長の人(天導愛菜)にも妹疑惑がかかるはずよね,と言ったら,年上なんだから妹のわけないでしょうとにべもなく.でも魔女の人(嵯峨良先輩)は孤児で実年齢にゆらぎがあって妹かもしれなかったやん,いやその手はもう使ったので二度はないと.ウラシマ効果とかでどうにかなりませんか.無理ですか.
生き別れの妹というのは,年齢差のある女きょうだいだったかもしれないし,彼が兄でもう片方が妹という役割をあてていたのかもしれないし,背丈がちいさくて妹みたいに思えてたのかもしれない.幼い頃の記憶では姉と弟のようだったけど,男の子の背が伸びて,再会したときには兄妹みたいになっててお互いに気づかない,とはまれによくある話で,あるいは女の子のほうが男子の背を追い越す場合もあるわけで.
絆を感じさせる妹という言葉と,記憶や記録が失われることの組み合わせは格好のミステリーになる.確かなはずなのに曖昧で判らない.妹は広く,そして変化する.
それで,生き別れの妹を捜してる孤児の男子と生き別れの兄を捜してる孤児の女子が出会ったならばまずはどうする?
雪人「そうだ! お互い感動の再会を果たしたら、またこの街で会うっていうのはどうだろう?」
美優樹「ここで?」
雪人「ああ、瀬名はお兄さんと一緒に来てくれ。俺も妹を連れてくるから、四人で思いっ切り遊ぼう。きっと楽しいぞ」
いや,四人ちゃうやろ,きみらが兄妹ちゃうんか,というツッコミ待ちである.女子校暮らし,ど田舎暮らしを理由にしてこのふたりのダブルボケがずっと続くなか,あんたらが兄妹ちゃうんか疑惑の引っ張り具合も自然なものと思えてくるのが可笑しい.
ダブルボケのコンビが新生活になじんでゆく序盤.記録に残ってない人間と,人間にしか見えないロボットの存在,名前も年齢も定かでないだろう孤児たちの,どうにも見た目や記憶の役に立ちそうもない兄妹さがしが始まったところである.
まさかの小公女でした.僕が.
御曹司としてちやほやされていたのですが,父親が異国でダイヤモンド事業を進めるなか行方不明となり一日にして凋落.
て,まぁ,ダイヤモンドというあたりですぐに小公女判定は出ます.
するってぇとこの校内にわざわざ忍び込んで食事を持ってきてくれる幼なじみのお姉ちゃんはラム・ダスですか.まじで…….
青年男子がリトルプリンセスの境遇にあるという転倒が,夜の行いにも可笑しみをもって距離を与えてくれます.かなめさんにつきましては,それに加えて白馬に乗った王子様を待つ,そういうちょっと隔たった物語に焦がれることを重ねた先に結ばれます.
らぶらぼ ~調教なんて興味のなかった俺と彼女の放課後SMラボラトリー~
だから僕は,はたして全国3000万人の女子高生のみなさま憧れのラム・ダスと結婚できますか.次はそちらの選択肢を選んでみます.
ぐっとくるのでもう一度読み直してから,とも思ったのだけど,メモとして.
苺花「目標?」
お兄ちゃん「そうだ。テストでいい点取ったらお前がこの前欲しいって言っていたゲーム買ってあげよう!」
苺花「!?」
お兄ちゃん「お兄ちゃんお姉ちゃんからのご褒美だ。どうだ、これなら頑張れそうだろ」
苺花は四女.長女の柚奈はお兄ちゃんから見ると双子の妹だけど,苺花から見ると姉なのでここでは「お姉ちゃん」と呼ばれてる.誰の目線で言葉を組み立てるかによって会話にでてくる続柄は変化します.
この場に柚奈はいないのだけど,お兄ちゃん勝手に「お姉ちゃんからの」ご褒美でもあるんだって言ってる.この一心同体な双子感覚が随所にくすぐったく登場します.
みかん「兄ちゃん兄ちゃん、わたしもー。わたしももっとなでなでしてー」
お兄ちゃん「おう、ほらこっちこーい」
柚奈「ほらみかん。今日は兄さんのために早起きして、えらいわね。よしよし」
お兄ちゃん「なー、いい子だよなみかん。なでなで」
---よしよし~なでなで~
みかん「んんん~っ、Wなでなで~~~っvv」
(引用部末尾,vはハート文字)
みかんは兄ちゃんなでてとしか言ってないのだけど,ごく自然に柚奈のほうが先に手が出て,結果的にふたりでなでているのだ.
名前が名前でなく「お兄ちゃん」という続柄になってる時点で力の抜けるところなんだけど,続柄を中心に運動してゆくさまが「お姉ちゃん」にまで広がってるところが非凡に思いました.
お兄ちゃん「1度それぞれの気持ちをちゃんと確認しないとだな」
柚奈「ええ。お兄ちゃんお姉ちゃんとして」
お兄ちゃんと柚奈が年少の妹のことを思うとき,それぞれお兄ちゃんとお姉ちゃんになります.もちろん柚奈が妹としてお兄ちゃんと向き合う機会もあって,柚奈がお姉ちゃんであり妹でもあるということは本人にとっては悩ましいところであり,またときどき交ざって可笑しくもなってしまう.
花梨「お、ねえねえ兄さん的にはこういうのはどーなのよ、姉モノ」
お兄ちゃん「イイネ!!」
花梨「やっぱあれかおっぱいなのかおっぱいなのか! 柚奈姉おっぱいでっかいもんね!」
お兄ちゃん「いやあの子、妹だから……」
次女,小梅の言葉も可笑しい.
小梅「ときどきふと思うんだけど、お姉ちゃんとわたしって本当に妹なのかなあ」
お兄ちゃん「年少組が子供過ぎるんだよ、花梨を筆頭に」
お姉ちゃんとわたしって本当に妹なのかなあ,である.誰が誰の姉で妹って,視点のいったりきたりする様が面白いでしょう?
四人の女の子から告白されたので誰かひとりを選ぶよ.
選択肢:
そこで、俺が見る影は。
[葵]
[茜]
[響迦院さん]
[恵那]
ひとりだけ名字+さんだよ,響迦院百合香さん.ほかは妹ふたりと幼なじみだもんで名前よびすてなんだ.
百合香「八千穂家のファミリー、という感じがするのよ。なんか私だけ仲間外れみたいな感じで、寂しいですわね」
葵「う、うーん……それはさすがにどうにも」
恵那「百合香さんのことだから、これで大和の恋人になれば仲間入りできる! とか考えてる?」
百合香「……それはなんか本末転倒ですわね」
だけどそういうわけで大和にとって響迦院さんが響迦院さんという普段の呼び名で脳裏に浮かぶことが,僕は嬉しいんですよね.大和の視点を感じさせる気の利いた選択肢表示であると思います.
実の姉妹や複数の女性と関係を持つ場合,そんななかで交わされる気遣いのことを誠実さと呼ぶのはふつうの意味ではためらわれると思うので,なにかそれに近い言葉がほしい.人間は場当たり的なところがあって,あることがインモラルで別のことがそうでない,というのは矛盾しない,そうしたとき,その場その場では彼ら彼女らの心がゆき届いてると思える場面が多かった.
心洗われます.
お兄ちゃんお姉ちゃんからのご褒美だ,とはその場にいない人物を勝手に巻き込んだ発言なんだけど,そりゃほかの妹たちのうらやむ共犯関係であるよなぁ.
お兄ちゃん,お姉ちゃん,妹たち,という呼称が登場するたびに,この人らの過ごして来た日々をなにかしら想像させるお話.言葉の端々のところに良さがあるの.
というあたりの掘り下げはこちらが素晴らしいと思います.
http://d.hatena.ne.jp/singing_root/20120306#1331043793
お姉ちゃん,というワードが出てくるたびにほっこりとします.
出会った瞬間じゃなくて後になってから一目惚れだったことに気づくのはロマンチシストだよな.
決定打は二年生の文化祭の後片づけの時。
たまたまふたりで生徒会の演し物を片づけていた時、“あれ、もしかしてわたし、この人に一目惚れしていたのではないだろうか”と気が付いてしまった。
恋は猛毒(もうもく)と言うが、
まったく、遅効性にも程がある。
いろんな過程があって長らく温めてきた感覚に理由付けるとき,言うに事欠いて一目惚れですか!
一目惚れっていうのは好きになる過程がなくて,すべては好きだと意識された後の話になるわけでね.
出会いの,一目惚れの瞬間に遡ってさ,そこからまた今日までを一目惚れの恋として新たに辿り直すんだぜ,その気持ちは.
とまぁ金鹿さんのことは好きなんだけど,有珠さんのクリスマスの夜もどうかしているという感じの運びでした.魔女とか魔術師とか魔法使いの伝奇的な回復力はジェットコースターみたいに次々と戦闘することを可能にしてるのですが,それに伴って男の子と触れあう展開の密度も高くなっています.おなかぱっくり重体のためおんぶされて坂の上の屋敷へ帰る有珠さんですが,着いたらすぐ自転車ふたり乗りでまた坂を下ることになります.これじゃあふたり乗りするためにわざわざ帰ったようなものだわ.
まさか歩く速さの話が後に参照されようとは思ってなかった.
何かに急かされているような、そんな……。
智「心境の変化ってやつなのかな?」
(中略)
智「あれ……?」
色々と考えていたせいか、気づかないうちに歩くペースが早くなっていたらしい。
まるで誰かの影響を受けたように背筋を伸ばし、冬の朝の寒さに負けずきびきびと歩いている。
---誰の影響?
智「そんなの明白だよね……」
でも……。
どうして“彼女”なのだろう?
歩くのが速い女の子から影響を受けるということ.それでずっとゆっくりだったこの人が歩くの速くなるというのは信じられない変化だったのだけど,「あれ……?」という不意に気づかれる感じが先にあるのだったら,なるほど判る.たまたま自分が早足になっていたとき,そこからの連想で自分の気になっている女の子のことが思い浮かぶのである.
ギャルゲーの女の子が可愛いというのはふつうのことですが,グエンのそれは度を超しているように思われました.