2006年度 ライトノベルBESTランキング ウェブアンケート

別段とんがってはいないけど,せっかくだから投票内容を書いときます.

1.あなたの好きなライトノベル作品・シリーズを5作品まで挙げてください。

1位.MF文庫J 侵略する少女と嘘の庭  著:清水マリコ/画:toi8
 男の子にだって自分のお庭があるんだよ.
2位.電撃文庫 電撃!! イージス5  著:谷川流/画:後藤なお
 自分たちの幼さと付き合ってる様子が好み.特に食事の世話についてのそれ.
3位.ファミ通文庫 学校の階段  著:櫂末高彰/画:甘福あまね
 すべての現役階段部と元階段部のひとたちに届くといいな.
4位.電撃文庫 とらドラ!  著:竹宮ゆゆこ/画:ヤス
 クラス中の交友関係について作者の目が公平に配られてるところが好き.あと電柱戦.
5位.電撃文庫 ストロベリー・パニック!  著:公野櫻子/画:たくみなむち
 体に正直であることの煩いと,ならばこそいっそう華麗な日々.花のようなおはなし.

2.あなたの好きな(もしくは印象的な)キャラクターを3名挙げてください。

1位.川嶋亜美(とらドラ!)
 人の性格に裏も表もないですよ.あえていうならいっぱいだ.
2位.中山りあ(侵略する少女と嘘の庭)
 1/144ストライクガンダムを「この人」と呼んで人扱いする心性がとてもいい.
3位.早川牧生(侵略する少女と嘘の庭)
 「プラモ好きな中学生に無理言うなよ……」幼さへ向かう自意識の,この言い方が可愛らしい.

3.タイトルにインパクトのあった(もしくは印象的な)作品を3つ挙げてください。

1位.「とらドラ!」
 なにそれ?と思った.
2位.「学校の階段」
 階段なる人工物への偏愛がストレートに伝わるタイトル.階段の匂いすら漂ってきます.
3位.「電撃!! イージス5」
 電撃,のあたりがあからさまでちょっと恥ずかしい.

4.カバーイラストが気に入った(もしくは好みの)作品を3つ挙げてください。

1位.「侵略する少女と嘘の庭」toi8
 文句なしの美少女です.

7.1年間に読むライトノベルの数(該当箇所の欄に、1つだけチェックをつけてください)

数えたら該当期間内には12冊でした.

ダンス

ちょこSisのED最後のほうでキャラクターを横から見ようとすると厚さがなくて着せ換え切り絵みたいになってるのは鈴木典光の井出安軌に対するオマージュということでよろしいんでしょうか.監修に過ぎないのであまり持ち上げるのもどうかとは思うのですが,作詞もやってるし.

Sister Soul

まず「わたしはちょこ!! お兄ちゃんの妹なの」という同語反復的な言い回しから「さて,兄チャマは四葉の兄チャマなわけデスが」という言い回しが思いだされるというのは四葉を愛する人にとってはあたりまえの常識の反対の反対という前提で話をします.いちおう解説しておくと,発話のなかで兄という語が最初に出てきた時点で語り手(ちょこ,四葉)と兄たる人物との関係は自ずと明らかであるのに,引き続きもう一度,語り手と兄との関係(「妹なの」,「四葉の兄チャマ」)が語られているという点でこの二つの言い回しは似ています.

このような言い回しはやはりおやッ?と注目されるところであって,ちょこSis漫画版1巻p.111では駆君がツッコミを入れたり4巻p.95では幼稚園のみなさんを戸惑わせたりしていますが,そういうものであるだけにいっそう,ちょこの独創的な言い回しとして何度も使われてます.聞いた感じとしては反復されることによって兄妹の自明さが強調される,兄妹という関係はそもそも男の子をもつ母親から女の子が生まれてきたとき自明に与えられてしまうものであって,はじめから決まっているということを極端に取り出してみたのがはるまとちょこの関係であって,その極端さこそがちょこのこの言い回しに現われているように思われます.念のため確認しておくと小さい頃のはるまが妹をくださいと祈ったのはサンタさんではなく神様で,たまたまその祈った日がクリスマスだったのでした.母の出産に際してコウノトリが妹を運んで来てくれると思っていた彼の素朴な信心が,自明さの極端に取り出された兄妹のあり方へとジャンプするとき,つまりクリスマスプレゼントとして妹が届けられたときの惑わされるような感じは,神様への祈りと人工的なおもちゃ祭りにおけるサンタさんへのお願いとがわざとまぜこぜにされているためです.そして,戸惑うべき場所が多いほど奇妙さは棚に上げておきやすい.

四葉の場合「さて,兄チャマは四葉の兄チャマなわけデスが…四葉のことは,どう思ってマスか?」という自明さを疑う問いかけが続きます.加えて四葉はちょこのように自分が妹であると定めるのではなく兄がどうであるかを定める点でも,自信よりも相手を伺う気持ちのほうが大きいように聞こえます.それをひっくり返すとそのまま,ちょこがはるまの妹として愛されることを疑う様子はないように見えます.ここで兄妹が愛しあうものだというのはまぁ,僕の文章を読む際の大前提なのでさておいてください.

そういうわけで,アニメのほうの第12話でちょこがはるまに嫌われちゃったと思うのは漫画版にはない話で,内容的にもアニメ独自の読みが行われていると思いました.はるまの失恋に関して漫画ではねこにゃんダンスの話とのクロスオーバーで紛れさせてしまうのと比較して,アニメのほうからは第12話に感情のやりとりの頂点を作って区切りをつけたかったという意図を感じます.コミックスで一気に読む分にははるまが失恋へと向かう流れのなかにねこにゃんダンスが浸食してゆく様子,例えばはるまが綾乃さんから電話で結婚の報せを受ける横ではちょこがダンスを踊っている,というのが面白いと思ったのですが,1週ごとのアニメシリーズではうまくないという判断だったのかもしれません.漫画も連載で読んでいたらどう感じていたかよく判りません.

聞き流す,受け流す

タイムリーすぎてびっくりした.「スルーする」という言い回しを僕も使ってきたのだけど,文字にしてみてから改めて読むと音が重なって変に聞こえてきたので今回避けた,とだけ.

するーする.
するーするするする.
するするり.

ところで聞き流すことと受け流すことはかなり違う.機があるので無理してできるものではないが,できる場合には後者がスマートだ.

早見裕司「夏の悲歌」

夏の間に読み終えていたのだけど,その夏も全く過ぎてしまいました.

自分に引き寄せて語ることはいくらでも出来るのだけど,いつも書いてるような内容になるので止めときたい.つまりは学校での生活において,級友たちの間に泣きたくなるような違いとしてあっちゃう心身の発育の差に関する思い出話で.

季節が終わりを告げるラスト15ページにこそ前のめりっぽい筆勢があるわけだけど,それでもなお語り尽くすためには300ページを要した思い出のほうを採り上げたいです.

酒井俊蔵先生のこと

泉鏡花「婦系図」より.

 (晩の飯を内で食って、翌日の飯をまた内で食わないか、酒井の籠で飼ってやろう、隼。)と、それから親鳥の声を真似て、今でも囀る独逸語だ。
 世の中にゃ河野さん、こんな猿を養って、育ててくれる人も有るのに、お前さん方は、まあ何という、べらぼうな料簡方だい。

言葉にはできやしないけど,僕の20代を相当に反映し、また大いに裏切ることもあるその何か.

「婦系図 湯島の白梅」(1955)

元気を出そうと思って,途中で止めてた続きを見る.ちょっと気持ちが落ち着いた.

僕の先生ランキング第1位であるところの酒井俊蔵先生がここでも存分に愛されていました.ドイツ語辞書の完成会で酒井先生が早瀬について触れるという話が追加されていて嬉しい.原作後半の静岡編を省略したことによって,酒井先生が早瀬を拾ったことの男前分が描かれないのを補填するのだろうけど,完成会ではなるほどそんなこともあったろうと新たに思わせる.

妙子さんがかわいいのはまぁ名前がかわいいのだから仕方ないよね.

余談

シリーズ脚本の人(岡田麿里)に見覚えがあると思ったら,シムーンや北へ。DDDも手がけた人.シムーン#13その他とか僕の好きなところをピンポイントで突いてくる.

いやなに,シムーンは第13話が好きって言いたかっただけ.