健全な精神の緩やかな回帰

「この世からコーヒーがなくなってしまったら一体私はどうなるんだろう.」
梨木香歩の「エンジェル エンジェル エンジェル」は買おうかどうかずっと迷っていたのであるが,本屋で開いたページにたまたまこの一節があったため,そのままレジへ連れて行った.主人公はコーヒー中毒者で,一方私は今月からコーヒーを止めていて,まるで私がコーヒー断ちするのを待っていたかのようなタイミングでそのページは開かれたわけであるが,奇縁について語り過ぎている昨今,こういうことを話すのは怖いような気がする.
あらかじめ予想される話の筋があるとき,それに沿った出来事やそれとは逆に話の筋からずれた出来事は認知されやすくなるものである.コーヒーをやめることを考えていてコーヒー中毒者の告白が目に留まるのはそういう仕組みではある.奇縁とも呼ばれるそうした仕組みを無視し続けるといつかは地と図の区別をつけられない灰色の野に辿りつきそうであるし,逆に大切にしすぎると運命に縛られて動けなくなってしまいそうである.
「魔女は自分の直観を大事にしなければなりません.でも,その直観に取りつかれてはなりません.」(梨木香歩「西の魔女が死んだ」)
このからくさみたいに絡まったお話めいた暮らしとは少し距離を置かないと,怖いような景色ばかり見えてくる.

遥時3・ぜんぶ

戦場であるためだろうが望美が着たきりすずめなのはやはりもったいない.EDスチルが特別に見えるのは望美がいつもと違う服着てるからかもしれないし,そもそも描いてる人すら違うように見える.

というわけで,おかえりシャオパイロン.埋められるものは全て埋めました.
21世紀鎌倉にまた行きたくなるような大団円.

遥時3・朔,敦盛,将臣編

前に遥時3はいちゃいちゃ度が足りないと書いたが,撤回.文章はともかく絵のほうでは割とぺたぺた触ってまして,あたたかい.あとエンディングのスチルがどれもこれも素晴らしいので,いちいち見て回る価値がある.本編は戦乱の世ゆえあまり色気はないが,戦の終わったエンディング以降はなんのためらいもなく幸せそうな二人が描かれている.朔のは戦場ではありえないし,敦盛は本編中のどんよりした感じがなくただただ綺麗.敦盛は本編中では彼の事情を反映してか神子に触らないのであるが,最後にはぎゅっとしてくれる.将臣と望美は伝説となって二人仲睦まじく暮らしました.南方には平家の落武者や源為朝の話が伝えられている.だけど舜天王と無理に結び付けるとまた戦をすることになるので,これはどこかの南の楽園であると考えたほうがいい.おばあちゃん(二位尼),お父さん(将臣),お母さん(望美),息子(安徳帝)の四人で幸せに暮らしましたとさ,というのでいい.

残りは白龍,譲,景時,弁慶.


あと改めて書くけど,本編中の和歌についてもムービーとかスチル同様,コレクションできたら嬉しかった.解説つきで.

からくりからくさ

人形の魂はどこから来てどこへ行くのかというお話.冒頭,祖母を浄土まで送りに出かけた市松人形の「りかさん」の魂が,四十九日を終えても帰還しないところから話は始まる.蓉子という女性にとってこのことは切実な問題であったはずだが,お話の大部分ではこのことに直接触れられはしない.その話とは居間から始まって,庭へ出て,日本全国を巡り,果ては大陸をまたにかけ小アジアにまで至る工芸繊維の叙事詩である.つまり,ぐんと腕を伸ばして世界の幅を大きくとってそこに連想の模様を織り込んでゆくような回りくどい方法でようやく,魂というよく判んないものは指し示せるか,どうか,といったところなのだろう.
「Rozen Maiden」で真紅が語るような(http://d.hatena.ne.jp/imaki/20041129)人形はゼンマイが切れるとどうなるのか,という話であるようにも読める.
人形と人間とがお話をするという状況において,「からくりからくさ」や須藤真澄の「振袖いちま」に登場する市松人形と「Rozen Maiden」の球体関節人形とでは語りを可能とするための手順が異なっており,それは人形の身体構造に依存している.「Rozen Maiden」の真紅は融通のきくメカニカルな関節を持つため,ゼンマイを巻くことによってそれらが動作可能となったように見える.しかし市松人形は関節をもたない,あったとしても正座が出来る程度であり,りかさんが蓉子を手助け出来るということは魂について描くことによって示される.あるいは,いちまの場合は時々完全な人間の姿に化けさせることによって,人間のゆきと友達をやっていても不自然に見えないようになっている.
少年が突然やってきた小さなメカ人形たちと一緒に戦うことになる話というとまずはゴールドライタンを思い出すが,「Rozen Maiden」がロボットでなくお人形さんの話であるように思えるのはジュン君の裁縫の才能のおかげである.ここで挙げた三つの作品では人形が人間にちょっかいをかけられるようになるための理屈はそれぞれ異なっているが,人間の側から人形の世話をする方法は共通して彼女らの服を裁縫してやることである.なるほど,身体構造に関わらず,お人形さんといえば服を着ているものなのである.一方で人工物がロボットと呼ばれるとき,普通そのメンテナンスについては意識されるが衣装の世話をすることについてはあまり意識されない.
そういえば早見裕司の「少女武侠伝 野良猫オン・ザ・ラン」ではロボット少女がひらひらな服を着ており,ロボットというよりはお人形さんであるように見える(参考:http://imaki.hp.infoseek.co.jp/200401.html#23a).ここではロボットのようであることと人形のようであることとが上手に重ねられているように思う.

からくりからくさ (新潮文庫)

からくりからくさ (新潮文庫)

振袖いちま (1) 夢と野望の市松人形

振袖いちま (1) 夢と野望の市松人形

Rozen Maiden 1 (バーズコミックス)

Rozen Maiden 1 (バーズコミックス)

少女武侠伝 野良猫オン・ザ・ラン (EXノベルズ)

少女武侠伝 野良猫オン・ザ・ラン (EXノベルズ)

リリーナ・ピースクラフト

上の過程で掘り出したもの
ガンダムWが待望の新OPに変わった頃で,それがえらく気に入っていたのでした.
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・作成日
 1996/02/06.もう9年も昔の話である.
・原寸
 1705×1545.印刷用に.RAMが少ないので苦労したはず.
・制作環境
 - MacintoshQuadra650(68040/33MHz,RAM 20MB).PowerPCカード搭載.とはいえPhotoshopはまだPowerPCにネイティブ対応してなかった.プラグインによりフィルタ処理だけは高速化したけれど,絵を描く上ではあまり関係なかった.
 - Ezier Gray-J (INTERWARE).ハンドスキャナ.当時はフラットヘッドスキャナはまだ高価だった.腕を一定の速度でスライドさせるのが難しい.
 - ArtPad II ADB KT-0405-A (WACOM).A6タブレットのはしり.画期的な安さだったので早速買った.
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今見ると花と茎とが繋がってないあたりで不安定な絵.
ともあれ昔は版権絵らしい版権絵をわりと描いてた.

僕の一番古いCGは1995年の年賀状として描いたもので,今年のお正月でちょうど十周年になる.昔は描くたびに絵柄が違っていて嫌だったが,今ではむしろそのほうが面白いと思っている.

新年会

久々にサークルの飲み会に参加.
7年前と同じ場所で7年前と同じ人たちと7年前と同じように話すことが出来るのが幸せだった.

カラオケではダ・カーポ特集と称して「サクラサクミライコイユメ」「空からこぼれたSTORY」を.そういえばこの二つは宮崎なぎさ繋がりでもある.