君のてのひらから

ちなみに,全く思いもよらぬことをするという発想は,D.C.の朝倉純一が「まんぼう」と言う例のアレである.最近,彼のことをよく思い出すのは LikeLife(HOOK)で手のひらから紅茶を出す人が出てきたからである.この奇妙な能力は常識人である主人公には気味悪がられていた.そんなところから出てきた紅茶は普通飲む気がしないだろう.一方で,純一が手のひらから和菓子を生み出してさくらがそれを嬉しそうに食べるのは,二人のおばあちゃんとの縁や親密な間柄を背景にしているからであって,それはおじいちゃんと孫の間によく見られるような世事を忘れた優しさを感じさせる.ウケモチノカミだってツクヨミと親密であったならばきっと殺されやしなかったであろう.

温泉行

ふぬけた一日であった.体調が悪くて気を病んでいるようであるが,気を病んでいるから体調が悪いのかもしれない.そのどちらであるかはなかなか区別できないので深く考えても仕方があるまい.だから,全く思いもよらぬことをすることにしよう.

今日から東京出張であるが,ふぬけていたため宿の予約を忘れていた.あわててWebを探したがいつも泊まっているような安くて近い部屋はどこも満室である.そこで前々から裏技として聞いていたLaQua(ラクーア)で夜を過ごすことにした.安くて近いというのもあるが,温泉でぐうたらするのも良いと思ったのである.・・・などと考えると今日という日が少し楽しくなってきた.

コンテンツのお墓

@niftyホームページの使用上限を10MBほどオーバーしてしまったため,現在(10/20)http://homepage1.nifty.com/fluorit/index.html は見ることのできない状態になっています.

今回わかったこと.
・上限をオーバーしても,使用量がチェックされるタイミングまではアップロードできてしまう.
・チェック後はファイルが消されたり警告されることはないが,新たにアップロードしようとすると,ファイルサイズ0でアップロードされてしまう.

復旧までしばらくお待ちください.

現在@niftyだけでも40MBのコンテンツがあるが,大抵の人は1MB分も見てないであろう.しかしその割には維持費がかさんでいて,僕のほうとしてはお墓を管理するような気持ちでいる.つまり,一年に一度参るだけ.自分が残したものを維持するというのはそういうコスト感覚で,だけどこれを怠るときっと彼らは化けて出てくるからいけない.昔の自分が創ったものを眺めていると,時は巡るのだと強く思う.それは信心深いときの気持ちと似ているため,ついその二つを繋げて考えてしまう.

ワスレナイデ ハーフライフ

龍神四方山話

〜以下,SNOW(スタジオメビウス)の話をばらしていますのでご注意〜

「友達以上 恋人未満」で久しぶりに龍神村を訪れてみると,龍神の滝や社の整備された姿が時の流れを感じさせた.しかしそうであるだけに変化のないものは目立つ.龍神村に春が来てから十数年経ったが,出雲家の人たち,橘家の人たち,そして小夜里さんは芽依子が追いつくのを待っているのだろうか,おそろしいほど若さを保っている.順調に歳を重ねているのは,あのとき彼らの営みに迷い込んできた猫のシャモンと育ち盛りの子供であるさくらだけだ.シャモンは芽依子よりも桜花と共に時を過ごしてきたわけで,彼女のいない今は滞りなくゆくことが弔いであろう.

あさひはまだ登場していない.設定資料集を見る限りではやはりうさぎであって,もちろん人間の少女なんかではない.幸せである.そんな料理とかしてくれなくていいからさ.無理矢理人間やってる様子を見てるよりは,暗黒SNOWでうさぎ鍋にされそうになっている姿のほうがまだほほえましい.

母「うさぎなんて飼えません!」
・・・
彼方「あ〜あ.お前が人間だったらなー」
あさひ「………」
彼方「人間だったら,ずっと一緒なのになー」

「SNOW」あさひ編より

願いはただ一つ,二人とも一緒に居たかっただけで,彼方は子供だったから自由がなかっただけで,だから人間だったらな,なんて思っただけで.だけど今はもう彼は大人だから,あさひはうさぎのままでいい.

ぼくは今ここにいる.
もう振り返らなかった.
あの人を信じて振り返らなかった.
だから走り出した.
愛しいあの人の元へ…
走って…走って…
風が耳を掠めていく.
足が大地を蹴っていく.
ぼくは…あの人の元へ…
走った…

「SNOW」あさひ編より

あさひの最後の疾走と同時に想い起こされたのは「妖精族のむすめ」のラストシーンである.むすめのほうに振り返らないという描写はないが,むすめも決して振り返りはしなかっただろうと思える.あと,彼女らは故郷へ帰る喜びに満ちていて,むすめは生まれ育った沼地へ,あさひはあの日出会った彼方の胸の中へ,跳ねてゆく.つまり,彼女らはともに人間に化けたものたちであったが,彼女らが走る爽快感において,その行き先が妖精の世界であるか人間の世界であるかはたいした問題ではなかったことに,このとき僕は初めて気付いたのだった.

ところで,妖精族のむすめは「夢見る人の物語」(ロード・ダンセイニ,河出文庫)に収録されていたので最近読み直したのであるが,その際,調べものをしてこの東アングリア(East Anglia)の沼地がイングランドの実在する土地であることを知った.もちろん,ロンドンからは北東に位置する.東アングリア地方は手元の観光ガイドを読む限りではやはり湿地帯で,またどの街にも歴史ある大聖堂が建っている.見たところノーリッジ(Norwich)あたりがそれらしい.

イギリスにどんどん行きたい場所が増えてゆく.


(リンク先は18歳未満お断り)

Snow

Snow


夢見る人の物語 (河出文庫)

夢見る人の物語 (河出文庫)

  • 作者: ロード・ダンセイニ,中野善夫,中村融,安野玲,吉村満美子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
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好きな食べ物は何ですか?

昔,SNOWの食卓事情を指して学生には目に毒な話だと書いたことがあったが,それは続編でもそのままであった.「友達以上 恋人未満」でも相変わらず龍神天守閣のご飯はおいしそうである.そしてやはり食べるとき一人じゃない.前回はつぐみさんであったが,いまやそれは女将の役職とともに澄乃が引継いで,ついでに仲居さんであるところの娘さんまで一緒に側に居てくれるのである.変な旅館ではあるが相手は独りでパック旅行に参加してるような寂しい男の子であるからして,彼女らの性格なら時間に余裕があればにぎやかしに来てくれそうなものではある.今回,特筆すべきはバスガイドさんの存在であって,何故だかこの人と一緒にものを食べることが多いのであるが,これがまあおいしそうに食べるのである.おいしそうに食べる人の側ではごはんがおいしくなる.食べることとか笑うこととか寝ることとか,そういう生きてくのに最低限必要なことはどうやら人から人へ感染するように出来ていると思われる.

橘家に立ち寄ったとき,つぐみさん(いまやこの家の奥さんである)がご飯を作ろうとしたのに芽依子がそれに代わろうとした.芽依子には悪いが一瞬,残念に思った.が,あのつぐみさんが太鼓判を押すほどに芽依子も料理が上手いのである.そういえばあの父に料理が出来るはずはなく,ずっと芽依子がやっていたのだろう,それに加えて今はつぐみさんに教わることもあるとすれば上手いわけである.ごちそうさま.

なんにせよ,帰ってきた,という気がする場所である.

ところで先日,祖父の卒寿で実家に帰った.ちなみに卒寿とは九十のお祝いである(つまり「卆」).一族が揃ったのは何年ぶりだったろう.箱のお寿司をとって皆で畳の部屋に並んだ.上座に祖父,そこから叔父や父たちの男性陣が続き,その端っこに僕が座って,そこから女性陣と子供.僕と姉は当たり前のように隣同士に,つまり男女の切れ目のところに座っていて,僕が左で姉が右で,僕は自分の目の前のエビを姉の箱のほうへさっと移した.久々に会うとそういう子供じみたことってしたくなるじゃない.

正直,叔父さんたちとは共通の話題がなくって,祖母や母や姉のいる右のほうばかり向いて喋っていた.大人の,しかもはるか年長の男性の話題はよく判らないでいる.祖母はどんな暮らしをしているのかしきりに尋ねてくる.ご飯は? ・・・近くにいい定食屋さんがあるからそこで・・・そんなん片寄るんとちゃうか?・・・いや,色々出してくれるし.そこで姉が,○○くん魚も好きでよく食べるから大丈夫やで,と言った.ああそうか,僕は魚が好きだったのか,とそのとき判った.エビや貝は出来れば食べずに済ませたいが,魚はそうでもない.小さい頃の僕は偏食で魚しか食べられなかったから姉にはそういう印象があるのだろう.そうか,魚が好きだったのか.

だから最近の僕は,なるたけ魚を食べるようにしている.好物って普通,よく食べるんだよね.

幼い頃の口癖は「どっちでもいい」で,主体性がないとずいぶん怒られた.今ではそれなりに自分で選べるようになったが,それでも時々,ある人の言葉に規定されたくなる.なんだろう,母親が赤ん坊にものを食べさせるとき,おいしいね,といいながら食べさせるものであるが,そんな風に僕はときどき感染されたがっている.

それがきっかけで,僕はこれから魚と肉のバランスに注意し始めるのかもしれない.主体性というのはそんな風に何年たっても新たに獲得され続けるものなのだろう.貴方の色に染めて.そして僕はまた選ぶことが出来るようになるのだから.


(リンク先は18歳未満お断り)

友達以上 恋人未満

友達以上 恋人未満

まだ三日程度しか読み進めてはいないのであるが,こういう話であるに違いない.
そうやって脇道にそれながら読むのが楽しい.


龍神村の写真発見.
うちとこの写真は「龍神村に春が来たよ」.我々の泊まった国民宿舎龍神温泉ロッジは既になく,今は季楽里龍神という洒落た施設になっている.どちらの龍神村も徐々に今風の観光地化が進んでいるようで,ゲームのほうではなんと龍神の滝に売店が出来ている.

パコダテ人

全編に渡ってしっぽりと描かれるのは高校生のひかると隼人の好きとかスキとかいう関係である.何しろこの二人はお互い意識しているくせにこれでもかというくらい直接口をきかない.視線を交わしたり,自転車二人乗りしたりと言葉以外のメッセージには溢れているが,実際に話をするのは携帯電話で呼び出そうとしたのが一度と,あと携帯メールのやりとりが一度あったきりである.だからといって,初デートもままならない彼らは言葉なしで通じ合える仲だったわけでもなく,つまりこの携帯メールのやりとりがどうやら決定的なものとして強調される.

あるとき,ひかるは彼女の親友であるはずの千穂が隼人とデートしているらしいところを目撃したために,隼人と視線すら合わせ辛くなってしまう.それに加えて,ひかるの周りでは彼女に生えた「しっぽ」が原因となって日常の歯車が狂い,彼女はたまらなくなって自分ちの屋根の上へと逃げてしまう.ひかるが隼人にメールを打つのはそんなときのことである.

ひかる「元気?」
隼人「ひかるは?」
ひかる「海見てる」
隼人「ひとりで?」
ひかる「うん,ひとり」
隼人「気持ちいい場所?」
ひかる「うん……あたしの大好きな場所.いいだろ?」
隼人「俺だって,好きな場所あるよ」
ひかる「どこ」
隼人「こんどいこっか」

ひかる「うん,いいよ ^o^」

(最後の記号はiモードの顔文字)

まずは,新しい混乱に遭遇したとき,一つ前の混乱の保留されるところが面白いと思う.それをきっかけにしてようやくひかるは隼人へ(今までのように)メールを打つつもりになったのだろうし,またそういう気持ちが自分の中に帰ってきたことが不思議なのか,メールを打つときの彼女の顔はどこか敬虔な風に見える.メールを打つ人の表情というのはそう見えるものなのかもしれないのだけど.

途中で「いいだろ?」とくだけてみるあたりはなんとも甘酸っぱい響きだ.視線を交わすだけでは行き詰まってしまった彼らが,言葉でくだけてみせて,またそれに応じることで,もう一歩だけ自分たちの関係を明らかにすることが出来たのである.視線にしっぽはないが言葉のしっぽを捉えることはたやすい.言葉は触れるよりも形でやりとりされるから速くて,高速回転可能で,彼らの気持ちはそこで一気に盛り上がりを見せて,千穂のことを聞く必要もなくなってしまう.そして,ひかるの笑顔.

最後のデートでも彼らは言葉を交わさなくて,だけど肩を寄せ合っていかにもお熱い,ああもうドキドキします.恥ずかしい.この話において正直「しっぽ」はやぼったいと思うのであるが,しかし,こうなるとしっぽでも付けなければやってらんない話ではある.


パコダテ人 ~スペシャル・エディション~ [DVD]

パコダテ人 ~スペシャル・エディション~ [DVD]

宮崎あおいの表情を追いかけてるだけで圧倒される.服や髪型がころころ変わるのも楽しくて良い.ちなみにビデオを借りて見たため,DVD収録のメイキングは見ていない.

ご挨拶

ソガです.ご無沙汰しております.疏水太郎という名前も気に入っているため,ここではその名前も使います.長らくご心配おかけしましたが,まだ慣れなくてしんどいなりに日々が回り始め,ここでの試運転も悪くない感じなのでオープンにします.

予定していたコンテンツの公開が難しくなったため@niftyのサイトへの復帰はまだですが,こちらでこのまましばらく続けるつもりです.

殺風景なところですが,宜しければまたお立ち寄りください.

シスタープリンセス・リピュア#7-a 続拾遺

子供は自分に熱があるとか病気であるとかを自己申告しないと思われる.しんどい,とか言うことによって母親に気持ちを伝えるのがせいぜいで,その後,母親がこれは風邪だと告げることによってようやく病気であることが確定する.自分の小さい頃のことを思い出しているだけなので,これは単に僕の言語化能力の問題かもしれない.今でさえ自分が病気なのかどうかとかよく判らない.仮病のプロセスにしてもわが身を振り返ると自分で「熱があるみたいやねん」と言った記憶はない.「しんどいねん・・・」としんどそうな顔をして母親に言いに行って,そこで僕が病気であるかどうかの判定を仰いでいたように思う.

さて,「亞里亞,お病気なの.にいやに会いたい」と自己申告する亞里亞のそれは,いわゆる仮病にはなっていない.亞里亞の考える病気とは高々ベッドで少し横になることであって,そこには僕らが普通に考えるような病気らしいフリを認めることは出来ない.彼女は平気で兄や姉たちの周りをちょろちょろとしている.このエピソードでは子供のつく嘘は拙くて失敗するということよりむしろ,言葉の意味などあまり理解していなくとも嘘をつくことは可能である点に注目されている.嘘らしさを伴わない彼女の行動は,嘘というよりは「魔法の言葉」を唱えたと称するほうがふさわしい.そしてここで「魔法の言葉」だなんて思いつく兄はロマンチストである.それは胸にしまいつつ,亞里亞には,謝ろうね,と言うのもまた優しい兄である.

亞里亞の仮病を「病気です」と言い張るところからじいやさんの過保護な様子をうかがえるのも良い.亞里亞が本人にそれと判るような病気でないことは熱や顔色をみれば明らかだろうから,亞里亞の自己申告を万が一と考えてのことであろう.

芝居的な見どころとしては春歌のおかゆのシーンを挙げておきたい.おかゆを載せたお盆を運ぶ春歌に対して亞里亞が鬼ごっこのタッチをするのであるが,春歌はお料理を手に持っているがゆえに何も反応できなくておろおろしてしまう.不意打ちということもあるが,普段,華麗な身のこなしであるところの彼女が亞里亞にちょこんと触れられただけで慌ててしまうのが可愛らしい.

毎日緊張が続いていて,家に帰ってもそれが続いていて,不安で,しばらく何も文章にすることが出来ない状態だった.こんなとき落描きみたいなものでも絵が描けたというのは本当に助かる.四葉に感謝を.あと電話は頼りだすと際限がなくなってしまうので最後の手段にとってあります.これでも,なんとかやっていけそうです.


シスター・プリンセス Re Pure ~ストーリーズ3~ [DVD]

シスター・プリンセス Re Pure ~ストーリーズ3~ [DVD]

病気であると主張する立場が逆転してしまうわけについては,あんよさんによる説明がスマート.