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六ツ星きらりの舞台は近畿地方の架空の町,星城京と言う.その名前から想像できるように奈良の雰囲気を残しつつ,星の話をしやすいように色々と手が加えられている.ただし,奈良市はお世辞にも都会であるとは言えないが星城京は何故だか都会ということになっている.ここは都会であると良太が自慢するのを聞くたびに奈良出身の僕はんなわけあるかと突っ込みを入れたくなるが,同時になぜだか頬が緩んでしまう.僕も一度はそんな風に言ってみたいのである.

町には奈良町の佇まいが強く反映されている.奈良町とは興福寺の南に広がる江戸時代から明治にかけての古い町並みを残す風致地区である.京都と同じようにも見えるが星城京の町並みが奈良町のものであるという決め手は,軒先に連なる庚申さんの身代わり猿である.これは布で作った赤い猿の人形で庚申さんとともに全国で見られるものである.しかし贔屓目かも知れないがやはり奈良町の風景がいちばん有名ではないかと思う.

智樹はこの町の葛菓子が好物であるという.葛といえば吉野葛であり,奈良には天極堂という創業130年のお店がある.どうもだんだんお国自慢になってきたが特にこの辺りは僕が小さい頃過ごした場所であるため紹介しておきたい.東大寺へ参詣される際はぜひ天極堂にもお立ち寄り頂きたい.

この星城京は実際の奈良よりもハイカラである.横浜にでもありそうな落ち着いた喫茶店(カレーが出る)だとか,昭和初期のプラネタリウムであるとか,戦前の時代に新しい文物であったようなものを随所に見ることが出来る.先程の天極堂が作中で夕月堂となっているのは東京風月堂のもじりであるため悔しいが,一方で維新の世に洋菓子屋を開業した華やかなりし頃を偲ばせるものではある.平成の世にして感ずるハイカラというのは当時の未来の残り香である.さっきはああ言ったが古都奈良に都会というものはそぐわなくて,だからそうした残り香のおかげで古都でありかつ都会であるというありえない奈良を納得することが出来ている.


六ツ星きらり(千世)11/5発売予定.体験版にて.


奈良町・庚申さん
天極堂
 kudzu.co.jpというのがたいした自信である.
風月堂
 その歴史年表は紀元前から始まる.これまたたいした自信である.
 はてなキーワードの風月堂は今のところ喫茶店のほうの風月堂しか登録されていない.また,その漢字表記については注釈を必要とする


三条橋商店街(ゲーム紹介のページより)
 三条といえば京都を思い浮かべる人が大多数であると思うが,奈良における三条通りもJR奈良駅の前を通り春日大社参道まで伸びるメインストリートであるため,作中の三条橋商店街のモデルはこちらの三条通り商店街だと思われる.奈良町と興福寺との間を走る道であり,ちょうどあんな感じで土産物店や飲食店が並ぶ.ただし背景に描かれている宇宙雑貨こと宇宙百貨に奈良店はないため,ここは京都新京極も交じっている.

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