シナモンロール

いまどきの中学の校則は知らないが,結局のところ小遣いが少ないため喫茶店なんかには入れないだろうと思う.僕が喫茶店に一人で入るようになったのは大学院に進んでからで,特にミスタードーナツが多かった.当時は気のふさぐことが多くて大学にも行きたくないしかといって家にも帰りたくない,だから大学へ行く前は学園前のミスドで,家に帰る前は最寄駅のミスドで本を読んで落ち着いてから足を踏み出すという感じであった.その習慣は東京へ行ってからも続き,朝はミスドで本を読んでから大学へ行くことが多かった.そしてそこで出会ったのがシナモンロールであり,僕とミスドと里村茜とを繋いでいる.

シナモンロールはロイヤルと共同開発の末に生まれたメニューであり,鳴り物入りの宣伝が打たれていた.しかし,その大きさ,食べにくさ,甘ったるさは他のミスタードーナツのラインナップから明らかに外れている鬼っ子であった.初めて食べた際の感想は,無茶苦茶甘い,そして手がべとべとするので困る,というものだったが,それでもミスドへ入るといつもシナモンロールを食べていたのは里村茜のためである.ONE(輝く季節へ)の里村茜と言えば甘ったるいワッフルであるが,あいにく近所にマネケンのようなお店がなかった.つまり,その代用であり,僕はシナモンロールによって里村茜の気分を味わっていたのである.

さすがに不評であったのかこのシナモンロールは一時販売が縮小され,しばらくしてから新生シナモンロールとなって再び店頭に並びはじめた.小さくて食べやすい.そして前ほど甘くない.しかし,それは僕の食べたいシナモンロールではなかった.それでも僕はやっぱり思い出にしがみつくかのように食べていた.

シナモンロールはその後,お持ち帰りのみの販売となり,今では店頭から姿を消してしまった.僕はというと東京から帰って来た今もまだミスド通いが続いている.休日になるとそんなに食べたいわけでもないのにミスドへ足が向く.そろそろ出てきたお腹の気になる歳であるというのにである.


ミスタードーナツ
ポン・デ・ライオンは確かに可愛いが,ゴブリンのほうが好きだ.とくにパンキンの紹介文がいい.曰く「いつか王子さまが迎えにきてくれると信じている.フワフワのフレンチクルーラーを食べている時が,一番幸せ.」


輝く季節へ

輝く季節へ

中川亜紀子のリーディングがあるためあえてこちらを薦める.

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