沈黙のスパイラル-マタイ

博士課程の学生ともなると積極的な議論が求められる.このとき手ぶらでは先生と対面しづらいもので,やはり相応の研究成果が手土産として必要になる.しかし,先生と対面して話をしなければ先生の研究領域へ踏み込むことは難しい.自分だけで考えても最前線に立つ人と体験を共同化することは出来ないからである.しかし,対面するには手土産が必要である・・・

仮に,話せば咎められ,話さなければやはり咎められるという状況に陥ったとき,一体どうすれば良いだろう.

「この棒が現実にここにあると言うのなら,これでお前を打つ.
 この棒が実在しないと言うのなら,お前をこれで打つ.
 何も言わなければ,これでお前を打つ.」

「ぎゃあ,棒力反対です!」

果たしてそんな風に言えるだろうか.

座布団全部取られるかも知れないが,何かを言わねば余計に辛い.そんな状況の中にいる人を見たとき,”言うは一時の恥”であると励ます一方,自分がそうなった時にはどうにも回らなくなる.はじめの頃はあと少し頑張ってから会いに行こうと思っていても,結局,一人きりでは自分に対して期待したような成果が上がらないのでまた先延ばしにしてしまう.会わない時間が長いほどより大きな成果は求められ,会わない時間が長いほど研究は進まない.そのうちゼロになったみたいなはかない気持ちになってくる.

そういう場面に第三者として出くわしたら何もしないではいられないのであるが,どうにも互いに消耗する話であって,ぐるぐると,バターみたいに溶けそうになる.

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