〜以下,SNOW(スタジオメビウス)の話をばらしていますのでご注意〜
「友達以上 恋人未満」で久しぶりに龍神村を訪れてみると,龍神の滝や社の整備された姿が時の流れを感じさせた.しかしそうであるだけに変化のないものは目立つ.龍神村に春が来てから十数年経ったが,出雲家の人たち,橘家の人たち,そして小夜里さんは芽依子が追いつくのを待っているのだろうか,おそろしいほど若さを保っている.順調に歳を重ねているのは,あのとき彼らの営みに迷い込んできた猫のシャモンと育ち盛りの子供であるさくらだけだ.シャモンは芽依子よりも桜花と共に時を過ごしてきたわけで,彼女のいない今は滞りなくゆくことが弔いであろう.
あさひはまだ登場していない.設定資料集を見る限りではやはりうさぎであって,もちろん人間の少女なんかではない.幸せである.そんな料理とかしてくれなくていいからさ.無理矢理人間やってる様子を見てるよりは,暗黒SNOWでうさぎ鍋にされそうになっている姿のほうがまだほほえましい.
母「うさぎなんて飼えません!」
・・・
彼方「あ〜あ.お前が人間だったらなー」
あさひ「………」
彼方「人間だったら,ずっと一緒なのになー」「SNOW」あさひ編より
願いはただ一つ,二人とも一緒に居たかっただけで,彼方は子供だったから自由がなかっただけで,だから人間だったらな,なんて思っただけで.だけど今はもう彼は大人だから,あさひはうさぎのままでいい.
ぼくは今ここにいる.
もう振り返らなかった.
あの人を信じて振り返らなかった.
だから走り出した.
愛しいあの人の元へ…
走って…走って…
風が耳を掠めていく.
足が大地を蹴っていく.
ぼくは…あの人の元へ…
走った…「SNOW」あさひ編より
あさひの最後の疾走と同時に想い起こされたのは「妖精族のむすめ」のラストシーンである.むすめのほうに振り返らないという描写はないが,むすめも決して振り返りはしなかっただろうと思える.あと,彼女らは故郷へ帰る喜びに満ちていて,むすめは生まれ育った沼地へ,あさひはあの日出会った彼方の胸の中へ,跳ねてゆく.つまり,彼女らはともに人間に化けたものたちであったが,彼女らが走る爽快感において,その行き先が妖精の世界であるか人間の世界であるかはたいした問題ではなかったことに,このとき僕は初めて気付いたのだった.
ところで,妖精族のむすめは「夢見る人の物語」(ロード・ダンセイニ,河出文庫)に収録されていたので最近読み直したのであるが,その際,調べものをしてこの東アングリア(East Anglia)の沼地がイングランドの実在する土地であることを知った.もちろん,ロンドンからは北東に位置する.東アングリア地方は手元の観光ガイドを読む限りではやはり湿地帯で,またどの街にも歴史ある大聖堂が建っている.見たところノーリッジ(Norwich)あたりがそれらしい.
イギリスにどんどん行きたい場所が増えてゆく.
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