当たり前のやりとり

ただ,時々出てくる橘家,出雲家,雪月家の人々の言葉には相変わらずの印象がある.

誠史郎「やあ,翔平くん.靴が一足多いと思ったら君だったんだね」

(雪月商店の戸を引きながら)
みかん「んしょ…おばあちゃ〜〜ん」
小夜里「あれれー?このかわいい声はどなたかしら〜」

彼らは人の訪れた気配を大切にする.人よりも先に靴や声が現れて,それに対して彼らはもうおもてなしの準備を始めている.そのことがただの一言ですっと伝わってくる.

あるやり方が当たり前であることに気付くのは,ある人にとって当たり前の考え方が,別の人にとって当たり前の考え方によって突き崩されるときである.芳乃さくらだって不自然に悩んでいたわけではない.(というか不自然に悩むって可能なのだろうか?) ただ,彼女がそれによって追い詰められていたとき,純一の当たり前な考え方によってそれが解消されたから,ああ「まんぼう」の話ってなんて当たり前なのだろうということが気付かれるのである.SNOWの龍神伝説では彼方さんにとっての当たり前な行動が,過去の人々の行動に対して新しい道を切り開く.しかし,Legend編を読んでいるときには,過去の人々が別段,当たり前の行動を取らなかったとは思えなかった.そうした当たり前であることへの強い気付きが,純一や彼方さんたちの暮らしが寄って立つところの当たり前に続いてゆく時間,例えば幼い日の約束,祖母から孫へ,親から子へと続くその日々へ還るように思えるから,だから彼らの普段着の一言が改めて愛しくなる.当たり前であることが当たり前であるにも関わらず驚きを織り成す.

龍神伝説が自明さとともに展開する一方で,おくくりさまの伝説は分析を引き寄せる.憑き物というのはどうも,平明な言葉が道を切り開くというよりは,与えられた迷路を解くような気持ちにさせられる.前者において何かこぼれ落ちた部分を探す必要があるとすればそれは後者になるというわけで,友恋はSNOWにとって極めて素朴な続編であると思う.


(ソフトウェアのリンク先は18歳未満お断り)

友達以上 恋人未満

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おそらく芽依子の一番長い話のみ読了.
シナリオライターは前作同様,望月JETと書かれていた雑誌があったが,実際は次の通り.

博恵夏樹(「11日〜13日のシナリオ,一部を除いたトゥルールートのシナリオ」担当との記述がお仕事のページにある)
高橋直樹
玉沢円
JUN

望月氏はシナリオ補佐として関わっている.

D.C. ~ダ・カーポ~ DVD版

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