(これ以上,話して聞かせられない.……言葉が見つからないんだ.というより,わたしが,本気で話そうとしてないんだ.あれからもう,ずいぶんたった.ガールスカウトなんて,だれにも,たいしてかかわりのないことになってしまった.これでは,わたしが心から望んで話さなければ,まるであんなこと,起こりもしなかったことのようになってしまう.色あせて,やがて消えてしまう)
「考えていたことってね,どんな思い出も,心の中で色あせて,そのうち忘れてしまう.昔あんなに楽しかったことも,いまでは楽しくもなんともない.……そう思うと,むなしくてねえ.なんだか,自分が恩知らずのような気がして,せめて思い出話ぐらいできないものかしら……って,考えてたんだよ」
(少女ソフィアの夏「テント」より)

- 作者: トーベ・ヤンソン,Tove Jansson,渡部翠
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1993/11/15
- メディア: 単行本
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むかし好きだったことに対して思いを馳せるのは,その過去形に対して恥じ入るばかりなわけだけど.