僕は僕の手の長さを知らない.それでも目を閉じて自分の足の親指をつまむのは簡単である.しかし,目を閉じて手に持ったペンの頭で足の親指をつつくことはえらく難しい.あらかじめそのペンがおよそ15cmであるということが判っていても,自分の手が15cm伸びた感覚というのは計算できるものではない.だけど,目を閉じたまま何度か試しているとすぐにどこでも上手くつつくことが出来るようになる.このとき僕はペンが自分の身体の一部になったような気分になる.
座頭市(北野武)では再三,人が自分の身体の範囲を知らない様子が描かれる.目を開けていてさえ冒頭の荒くれ者は刀を抜くとき隣の仲間をうっかり切ってしまう.おそらく彼らの普段の間合いは拳骨であるため互いが触れ合うような距離に立つのが自然だったのだろう.念のため書いておくとこれは座頭市と直接斬り合う殺陣のシーンではなく,彼らはただ何気なく自分の手(道具)の届く範囲を測り損ねている.これは扇屋たちの試し切りのシーンも同様である.あるいはバクチ打ちが目を閉じて壷を振ろうとするが誤って自分の足先を壷で叩いてしまう.ほんの少し手先の感覚が変わっただけで人は自分の手の位置,足の位置すらも見失う.
どうやら身体の範囲というのは伸びたり縮んだりよく判らなかったりするものであり,そして手足を動かしている間だけその都度理解されるものであるように思われる.僕は居合術といえば橘右京か高嶺響だというくらいによく知らないが,おそらくはこの伸び縮みを把握する技なのであろう.
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昨日,テレビで見た.

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「だからあたしの手足よ 今はここにおいで」(さねよしいさ子)
久々に思い出したのだけどソマミチくんの好きそうな歌.