D.C. #14 

あまりにお熱い兄妹の様子を美春が嬉しそうに見ている話.こういうとき本人たちより周りのほうが嬉しがるもので,僕もやはりそのくちである.一方,当事者となると醒めてしまって,これは携帯電話が今ほど普及してなかった時代のこと,電話がないんで連絡先は友達の携帯電話だというのでかけたら,その電話を受けた友達が本人よりも嬉しそうに騒いでるのが聞こえた.紅潮した顔まで目に見えるようで,会うのはあんたじゃないだろうとか思った記憶がある.とはいえ,つまりこれは誰の話でも良いというわけではなく,身近な人の話でないと興味はないし幸せな気分にもならないのである.それで本人たちはともかく総量としては人の幸せが増えている気がするので,これで良しとしておきたい.

それにしても僕と彼らとの距離はここにあって,僕が美春のようにあの兄妹のことを嬉しそうな目で見ることは難しい.僕は彼女ほどあの兄妹の近くにいるわけではない.僕ができるのはせいぜいそうして面白い顔している美春のことをこちらから眺めて,その場に幸せが増しているのを感じとるくらいである.僕がフィクションへ向けて書く幸せっていう言葉はそういう風にして発せられます.

あと,芳乃さくらの泣き所はこういう目で見てくれる後輩や友達が側に居なかったことだと思う.恋愛を呼び寄せるような関係を二人だけで作るのは難しい.音夢やことりはそこんとこ恵まれてます.

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