D.C. #16, #17

芳乃さくらの部屋に置いてある,彼女の子供っぽい外見に似つかわしくない巨大なコンピュータはひとまずゲーム版と同じ形状をしている.しかし,アニメではそれをズームアップして映すだけでありゲーム版のような部屋全体を画面に収めるカットがないため,それがいかに痛々しい風景であるかは判りにくくなっている.

ゲーム版での彼女の部屋について補足しておくと,それは和室の六畳間で広いほうの一辺が縁側になっている(これはアニメ版も同じ).家財道具は縁側から見た左手の壁際に一畳半ほどの面積で収まる程度置かれているのみであり,あとはなんにも置かれていない様子をゲーム版のカメラは捉えている.置かれているものを詳しく見てゆくと,最も目立つものは消費者向けではない形状をした大きなコンピュータとその上のマニュアルらしき分厚い本を並べたラックである.その右隣に座布団とセットの低いテーブルがあり,ディスプレイ,キーボード,クライアントPC,ストレージらしきものが置かれている.すでにこの時点でいかにも成長が遅れた感じの中学三年生の女の子が持っているものとしてはおかしいが,ほかにも色んなものがあるならまだしも,これしか置いてないというのがなおさらおかしい.また,コンピュータの左隣には鏡台が置かれている.おばあちゃんのお下がりだと考えるには形状が昔風の大仰なものではないので,これはさくらが自分でわざわざ揃えたものであろう.化粧っ気のない彼女の見た目とのずれはそこにも見て取ることが出来る.ちなみにこの鏡台はアニメでは画面に映されない.

秘密は秘密として思わせぶりであるし,真っ直ぐな好意に戸惑うことはあっても,それ以上に僕らがさくらのことを気にかけてしまうようなカットはあえて省かれていることが判る.それに今回,純一がさくらにキスしなかったことで勝負は早くもついているのである.ゲーム版の出来事をそのまま持ってくるのではなく,腹立つくらいの周到さでもってちゃんと音夢がヒロインに見えるようなつくりになっているところは僕の好みで,というのも,こういう省略はゲーム版のさくらのことをよく判っていない人には出来ないはずだからである.


ゲームプレイ当時の話としては2002年の7月の話
あと,子供みたいにべたべたするのはアニメではさくらから純一に対してのみでしたが,ゲーム版では純一からさくらに対してもありです.「そのうどん一口くれ」とか.


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