うた∽かた #5

一夏はここへ来てようやく交霊によって視力を得ることの意味について考え始めるのであり,つまり,ここで言う視力というのは同時通訳のようにおよそ一足遅れでやって来る認知の力なのである.そもそもこの話全体が,彼女の見た話を回想する形で上映されてるのであるからして,どうにもそういう遅れてきた感覚を催させる.

これまでの話を振り返ってみると何度もお礼をもらってるわけで,彼女が自分で言うように見てるだけで何も出来なかったなんてことはないのである.しかしそれでも彼女がそんな風に考えてしまうとすれば,見たものが届くまでにはしばらく時間を要してしまい,届いたときには身体はもうどうしたって見た場所には届かない,だから見たものに対して身体で反応を返すことができない,そのままならなさが彼女をそうさせるのだろう.そんなん当たり前のことなんだけど,自分に足りなさを抱いてる多感な時期にはその理由が未熟さであるように思えて,うまく見過ごすことが出来ない.

そんなときに第三者じゃどうしようもない恋愛沙汰に触れてしまえばなおさら,これまでのことも全部そうだったみたいに見えてしまうのかもしれない.

どちらかと言えば今回の話も一夏が頼りになる話である.着付けとかね.

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