ふたりだけでいちゃいちゃと寂しいこと

特別な間柄というのはやはり二人だけの時間や二人しか知らないことを伴うように思うのです.たとえば,ある人と会うときに別の人も必ずいるとそうはならない.そうはならないという経験よりもむしろ,いつも三人でいたつもりだったのにあんたらだけでいつの間にそんなに会ってたんだよと,気付かなくて,後になって知らされることが多くて,そのときのがっかり感がそのまま彼らの間に特別なものを認めるのです.こういう話は男女問わないけれど,男の子と女の子が特別な関係になるには人前でできないことがいっそう多いでしょう,たくさんの女の子からひとりを選ぶことがあったとして,そのとき彼女たちは別々の場所にいたほうが話を進めやすい.だからね,美少女ゲームにおける空間というのはまずは物語に沿ってというよりは居場所を分けるために広がっているのだと思われます.

女の子たち同士を引き離して配置するとき,そのなかに寂しい場所が交じってるのは不自然なことではなくて,離すっていうのはそういうことだからね.ここの Q.17で言ってることは今になってみるとそういう事情に基づいていて,さまざまな場所と結わえられた彼女たちを選ぶことで恋愛の進む本編に対して,特定の女の子に対してあんまり頑張って恋愛しなくていい外伝においては女の子同士が引き離されて寂しいところに置かれるということが改善されて見えたのではないかと.

ONEにおける有名な選択肢に「×長森の席で食べる/○断る」というのがあって,ここで長森ははじめから寂しい場所に居るのではなく,浩平が長森の席で食べることを断って寂しい屋上へ行くことによって,長森は教室の席から引きはがされて,結果,二人きりになります.里村を追いかけるのも長森が追いかけてくるのも,選択肢を経て寂しい場所で二人きりになるという形の上では同じです.

女の子の居場所を引き離して分けることの極端な例は無論,全国各地へばらまいたセンチメンタルグラフティです.そして,北へ。Diamond Dust もその系譜ということになります.北へ。DD のように,はじめの選択によって登場する女の子が決定されるというのはたぶん珍しくないものと思いますが(ぱっと思いつくのはShe'snくらいなんだけど,しかし古いね),ここでは函館,帯広,北見,札幌,旭川……と,選択可能な女の子が広大な北海道の土地にどかーんと割り当てられている点において,美少女ゲームらしい空間設計を強く感じます.こういう直球なところは好きです.

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