姉妹天気図

ヨスガノソラ.同じ学年でありながら,互いの間柄を測るときに兄弟や姉妹という関係を持ち出しがちなお話でした.

僕もそういうの気にするほうです.ラブ.

春日野穹と悠の双子,天女目瑛と渚一葉の異母姉妹,そして極めつけが留年している中里亮平のポジションです.

そう,僕たちは同い年の兄妹……双子だ.

便宜上,僕が兄という扱いになっているが,穹にとっては兄妹なんて関係なく,立場は対等だと言う.

冒頭より,双子の間で長幼の順に関する意識のズレていることが明らかにされて,その後に通底します.

天女目瑛もこの順序を乱しがちで,姉っぽさ,妹っぽさという話題を捌きながら,この人ならではの関係が築かれてゆきます.

悠と亮平が見る瑛と一葉の姉妹の順は次の通りでした.

悠 「なるほどね……なんか見てるとまるで姉妹みたいだよね.渚さんがお姉さんで,天女目が妹.」

亮平「ああ,お嬢のほうが瑛にべったりで,手のかかる可愛い妹の世話を焼いてるっちゃ,そうかもな.」

悠 「うんうん,そんな感じ.」

亮平「でも.実はちょーっと,違うのかもしれない.」

悠 「え,なにそれ?」

亮平「ま,観察してりゃ,そのうちわかるよ.」

姉妹という言葉から始めつつも,固定的なそれだけじゃ掴みきれないものが残るのです.

穹が見た悠,瑛,自分の兄妹の順は次の通り.

穹「…………ああいう妹だったらよかった?」

悠「?」

穹は,僕と天女目のやりとりに何か感じたのかな?

穹「瑛は,優しい……でも,時々怖い.」

悠「で,でも……瑛は明るいし,ちょっと子供っぽいところもあるけど,そんな乱暴な子じゃないよ.」

穹「何考えてるか,わかんない時がある……笑ってるのに.」

(中略)

穹「でも,嫌いじゃない……ハルが好きなんだったら,付き合えばいい.」

穹「瑛が生き別れの妹だったら良かった?」

悠「だとしたら,誕生日が早い瑛は僕のお姉さんになっちゃうよ.」

穹「瑛が姉?」

悠「あ,ちょっと失礼な想像しただろ,穹.」

穹「……瑛の方がお姉さんなのに,年下みたい……」

奈緒「まぁ,どっちかって言うとそんな感じよね.

  じゃあ,穹ちゃんもお姉さんになった気分?」

穹「……わからない……瑛は不思議……年上にも見えるし,子供っぽかったりもする……」

穹「……でも……嫌いじゃない.」

だいたいは妹みたいなんだけど,そこには怖さとか年上っぽさがよく判らない感じで伴っています.

よく判らないけど,でも,嫌いじゃない,って二度も言ってる.

相手のことを言語化して,だけどわからなくて,でも,嫌いじゃない,というこの人の繊細な気持ちの運び方が好きです.

瑛と一葉たち自身にとっての姉妹の順は次の通り.

瑛「あたしにも姉妹が居るんだなって思うと,それだけで凄く嬉しかったから.」

瑛「あたしとカズちゃんって,同じ日に生まれたんだよ.」

瑛「変だよねっ……あたしの方が全然頼りないのに,カズちゃんよりちょびっとだけ早い時間に生まれたの.」

瑛「カズちゃんの方が,お姉さんって感じなのにね?」

一葉「…………何言ってるの……そんなこと……ないよ………」

互いに相手のことをお姉ちゃんと思う.

一葉「私が,おねえちゃんって呼ばれるかもしれないのよね……」

一葉「それにね,姉が妹を守るっていうのが当たり前なら,今度は交代ね.」

一葉「私が姉になるかもしれないんだから.」

一葉のことばの上では,母親が誰であるか判明することそのものよりも,それによって自分と瑛のどちらが姉であるか決定されることのほうが注目されています.それにたぶん,どちらが姉であるかということよりも,姉だ,妹だ,っていう話をふたりでできること自体が彼女らにとっては喜びであるように見えます.というのは,「あたしにも姉妹が居るんだなって思うと,それだけで凄く嬉しかったから.」

そして,亮平と悠と瑛の関係.悠,穹,瑛,一葉は同じ学年でありながら兄妹とか姉妹という年の差を感じさせる言葉を使っています.一方亮平はもともと上の学年であるのが留年によって彼らと同じ学年になっています.

…………留年?

僕が亮平と呼んだ時,一瞬教室がざわめいたのを思い出した.

つまり,亮平は一つ上の先輩で……でも,僕はそんなこと知らずに……

瑛「あー,亮兄ちゃん! 待ってよー.」

亮平は悠にとって呼び捨ての友達になるけど,瑛にとっては亮兄ちゃんであって,同学年のなかにある年の差というのが特に意識される対象になっています.同学年らしさ,つまり同じ学齢の人間が平たく友達になってゆくというよりは,そこに実際の生まれ月や性格の違いによる長幼の揺らぎが含まれていることを彼らはよく感じ取りながら,互いの間柄を測っているように見えます.

兄妹,姉妹といえばギャルゲーの華ですが,血縁関係や血縁のない間柄,あるいは半分の血縁といったその変奏を同じ学年の中に展開しようとしているところに何か執着を感じました.同じ学年で兄妹というと普通双子くらいかと思いますが,名字の違う異母姉妹と留年したお兄ちゃんまでいるというのはどうかしていると思います,おもに僕が.

ヨスガノソラ 通常版

ヨスガノソラ 通常版

天女目瑛がたいへん可愛いです.

まだ瑛の話しか読んでませんが,以上のように感じるところが多かったので.

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