谷川流「学校を出よう!」(3)

2巻は飛ばして3巻を読みました.表紙で選んだら.

回りくどい解説を与えて逡巡しながらも,原因と結果は白黒つけようという向きのお話.向きは向きであって,最終,結果を描くかっていうと描写されないことが多いのだけどね.茉衣子が類になんて説明したのかとか,部室の滋は最後にどうなったのかとか,そこんとこは助平されない.ただ,1巻に比べると結果の一歩手前までの因果はずいぶんすっきりしてしまっている.ともあれその中で若菜たちの部屋についても同じ流儀にしたがうならば,他の人の例を参考にしてみるとあの部屋で茉衣子が増えた理由は若菜にとってうり二つの茉衣子が増えて欲しかったためだという推理が進められそうなものであって,他の推理でもいいのだけど,しかしそこを推理することを良しとする人はさしあたっては居なくて,これはそもそも触れられないままになる.そういうことをわざわざ採り上げるのもなんなのだけど僕としては申し訳ないけど触れさせてほしいところで,「茉衣子ちゃんが二人になっても、あたしは困んないよ。(p.156)」困んないというかむしろ,そうあってほしかったはずで.しまいには「ね、一緒にいようよ。あたしと春奈も昔はこんなだったよ」(p.272)という言葉になる.自分たちがしていたリボンを渡すとかね,この双子を重ねる様子は改めて書かねばならぬことではないのだろうけど,おそらくは兄と同じ理由で春奈の姿を甦らせることはなかった若菜の,それでも分身とともに暮らすという日々が自然に望まれたとき,身近なところで水色さんと桃色さんとしてそれが現れたということをね,春奈の面影として僕が記憶しておきたくて.

こと推理する上では茉衣子が茉衣子の分身を増やしたということも充分にありそうなんだけど,若菜はもっと茉衣子に迷惑をかけるのがいいと思ったのでその説は採らない.

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