とらドラ2!

お弁当の時間に寄り合う面々,というこそばゆい話に.

小学生の頃,給食は班ごとに机を寄せて食べることになっていた.5人か6人,男女混成のそれは誰と一緒になるか自分で決められなくて,さして仲良くもない人と同席することもあったはずで,さて,食べる前から食べ終わるまでの40分ほどのあいだに僕らは何を話していたのか,まるで覚えていない.しかし,場が静かになって困ったということはなかったように思う.五年六年の頃については,かすかに担任の先生の声が思い出される.先生が食事のあいだじゅうみんなに何かを話しかけていてくれたような気がする.

中学へ入ってから自由に誰と食べても良くなったのはとたんに難しい.たまたま前後ろの席だったとか,同じクラブであるとか.そのうちそれが一定して,どこでお弁当を食べればいいかだなんて難しいことを嫌うようになると,クラスが別々になっても昼休みには誰か一人のいる教室へ移動するような,僕らは遊牧民になった.

6年ばかりの遊牧のうちに,いつの間にか増えた人もいればいなくなった人もいた.誘われることは不意で,僕も,僕なんかがいてもいいの,と思うような場所に居たこともあったから,寄り合う面々というのはみんなそれくらいの意外さをもってそこに居たのかもしれない.あるいは不意に思ったのは僕ばかりで,僕が周りの人を見る以上に,周りの人が僕のことを見ていてくれたのかもしれない.僕の鈍さを思えばだいたい後者だったろう.

とらドラ!の面々は現時点で誰も昼ご飯を食べる場所に難儀するようなことにはなっていないが,それはそれで座る位置であるとかメンバーについて悩むところがあるもので.

実乃梨の左隣に座らせられ、左腕でがっしり肩を抱えられ、
「ほれ、あーん」
コンブを口元に運ばれる。
「いらねぇっつうの!」

(p.160)

さて,強引に肩を抱えてくれる人のほうへ寄り集まっておくのが簡単ではある.電柱,いや殿中でござるぞ.お放しくだされ,櫛枝どの.とかそのうち言うようになる.芝居がかった言い回しは彼らの符丁でね.しかし,川嶋氏にも戦うべきものがあるだろうからそうもゆくまい.いらねぇっつうの! 脅しと腕力によって妨害されてしまったが,麻耶&奈々子と屋上でお弁当することは川嶋亜美にとって無意味でもなかっただろう.

虎と対に置かれるというよりは,虎が落ち着いた頃にやってきた二匹目の虎に見えるところ.おたまじゃくしを巡っての河原で無理を通す様子など,行き過ぎた意志のありようが好み.

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