角川映画の記憶があるからたぶん高校の頃だったろう,家族で夏に天川村へ出かけた.父の仕事のご縁だろうか,どこかのおうちへ泊めてもらって夜にはそちらのご家族ともいっしょにペルセウス座流星群を見に行った.
天川村でなくとも山へゆけば星などいくらでも見えるのだけど,そこは名にし負うところである.森のすこし開けたところで地べたに寝転んだらいちめん星だった.
星はときどき流れた.
そういえば星を見に家族で出かけるなんてことはこれが最初で最後だった.家族のうち僕が星好きであったことも,たぶんこの旅行と関係あった.鮎をはじめて食べて,天河神社に参拝し,まだ作りたてみたいだった村営の天の川温泉に浸かって帰った.
僕にとっての星はもともと図鑑が9で星空が1くらいだったから,星空が胸まで降りてくるのには時間がかかった.大学の後半,独り暮らしになってようやく星空が星空として見えるようになった.そうして大学のサークルでも同じ流星群を見にいった.定番の鴨川デルタ.このときに見た星は大きかった.
昨日は東京ではじめて流星を探して,雲が晴れるのを待った午前5時,ふたご座の方角に星がひとつ流れた.
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星へ思いを馳せた物語は,輝きであったり伝承であったり願いであったり solar system の制度であったり,およそ美の世界に属してる.
琴子「クリスマスツリーのてっぺんの星,あれって何だか分かりますか?」
琴子「馬小屋で生まれた神の子の場所を,賢者たちに教えた星なんですよ」
俺には,その大きな流れ星が,何かを教えてくれたような気がしていた.
生誕伝説は星と共にあった.
俺も流れ星には思い出が多い.
琴子と一緒に,原っぱに星を見に行ったこと--.
3年前のふたご座流星群--.
ギズモを公園で拾った時--.
それと,ついこの前の流星群--.
いつだって,世界が変わるのは星の降る夜だった.
図鑑のロマンチック少年少女は星の美に思い出を繋ぎ,世界の変化を仮託する.
樹「コスモスって,いつ咲く花でしたっけ」
式子「基本は秋だけど,12月の最初くらいまでかな~」
樹「へえ.雪が降ったりしたのに,頑張りましたね」
でも,単にそのコスモスが頑張っただけならいいんだけど.
この辺ってちょっと異常気象のケがあるからな…….隕石が降ったり…….
隕石,か.
あの,星降る夜に--
cosmos(宇宙)から星へ.花を見るにつけても星のことが連想されて.
流れ星ってのは,場所を選んで落ちてくるんじゃないか?
(中略)
そんな風に思うのは,妙にこの街には隕石がいっぱい落ちてくるからだ.
ここは昔からそういう土地だったらしい.
まだガキだった頃,学校で先生が自慢げに話してた.
そういう特別な石は,剣や刀の材料になったり,神社で祀られたりするから…….
そんな石の採れるこの地が,要石(かなめいし)の地と呼ばれるようになった,と.
鉱物も組成に色や輝きが伴う理科年表らしい美として,星と同じように思いを託されがちである.また,流星と鉱物を直接つなげるものとしては隕鉄があり,古くから特別なものとして伝えられてきた.
そういえば,この街の神社は,妙見っていう星の神様を祀ってたっけ…….
星への信仰.
琴子はポケットから,一掴み分の小石を出して見せてくれた.
樹「なにそれ?どうして石なんか……」
琴子「これ全部,隕石です」
樹「え!?」
琴子「姉さん,こういうの拾ったら,みんな私にくれるんです」
琴子「私が,流れ星好きなのを知ってるから……」
兄が連れてってくれた流星群,姉からもらった星の欠片,そういうのも全部あつめて.
冬のふたご座流星群に寄せて,すべては愛しい妹のために重ねられる,キラキラとした,せつない,星物語でした.