出会いはいつも恋のはじまり

……空の青さが目にしみたのよ.

いつ好きになったのか判らないものと,きっかけくらいは判っているものと,きっかけすら覚えていないものと.

尾崎翠

まずはこれが判らない.一乗寺の恵文社で買ったことだけは確かであるが,なぜ手に取ったのか判らない.たぶん,作者の名前が気に入ったのではないだろうか.

先日,久々に恵文社へ行ったら,右手方向にお店が拡張されていた.左手奥は相変わらず足穂ちっくなガジェット交じりであるが,女の子がこんなに多いお店だったっけ.顕微鏡女子ら.

僕はというと,昔ほどわくわくしないのである.この世界の片隅に,を探して本屋をはしごしたけれど,確実にあるはずのこの場所を忘れてしまっていた程度には.

探したら記録が残っていた.1998年5月28日のことである.

京都一乗寺の書店「けいぶん社」でなにげに見つけた作家。日本の幻想文学作家に名前を挙げられていたこともあったので。

なるほど.そうだったのか.このころのごく短い間だけは読んだ本の記録をつけていた.ちくま日本文学全集の「尾崎翠」に前後して読んでいた本は,「影の現象学」(河合隼雄,講談社学術文庫)「パラケルススの薔薇・ボルヘス」(ボルヘス,”バベルの図書館” 国書刊行会)「不死の人」(ボルヘス,白水社)「友井町バスターズ」(水無月ばけら,富士見ファンタジア文庫)「ロケットガール」(野尻抱介,富士見ファンタジア文庫)「坂口安吾」(坂口安吾,”日本幻想文学集成” 国書刊行会).……まぁ,いろいろ読もうとしていたのが判る感じですな.

須藤真澄

こちらも判らない.たぶん大学一回生のころ(1993年),Mさんに「振袖いちま」を借りたのではないかなぁと思う.

長野まゆみ

これははっきりしている.やはり大学一回生のころ「泉鏡花の再来だ」って友達が誉めてた,と姉が言っていたのを聞いて,「野ばら」を読んだ.結果的には泉鏡花云々は勘違いだと思うが,よいきっかけにはなった.長野まゆみファンや同人の方との楽しい出会いもあった.

正直なところ,当時は少年趣味が格好いいと思って読んでいた節がある.本当に好きになった気がするのは,魅力的な姉たちの出てくる「夏期休暇」からである.

泉鏡花

じゃあその泉鏡花.おおかた幻想文学の古典ということで大学一回生のころに読んだのだろう.素朴に「高野聖」から始めたが,これはつまらなかった.岩波で同じ本に入ってる「眉かくしの霊」は少し良かった.「草迷宮」はRoadsの初めてのシナリオに活かそうとして大失敗した(僕もまだ若かった).好きになったのは相当後になって「薬草取」を読んだ頃から.「婦系図」で魂の作家になった.

TM NETWORK

humansystemが最初だけど,それ以上判らない.中学のころ,Nっぴからカセットテープを借りたような気がする.

ZABADAK

こちらは明確.WATER GARDENのカセットテープを姉が友達から借りてきた.大学の受験勉強の間,「ガラスの森」を延々と聴いた.

渡辺美里

こちらも明確.中学のころribbonのカセットを姉が叔母から借りてきた.叔母と音楽を共有するというのは今ではちょっと想像できないけれど,当時は叔母もまだ大学生だったはずである.

松浦有希

この話は何度もしちゃってるけど,そのせいもあってはっきりしてる.新聞のラジオ欄で「松浦有希の夕暮れ探険隊」(FM大阪)という番組の紹介があって,タイトルと内容に興味をもったのがきっかけ.僕のCDを友達が喜んで聴いてくれたのも嬉しかった.

谷村有美

うわ,判らない.たぶん,音楽の趣味を共有してたE(さっきの友達)からPRISMを借りたんじゃないかと思う.
VIDEO JAMの司会とか(ローリーと一緒だった),FM802 MUSIC GUMBOのパーソナリティーとかあって,僕も音楽まわりのことが楽しかった時期だった.

槇原敬之

谷村,ローリー繋がりで思い出したからマッキーのことも.こちらは間違いなくEからファーストシングル「NG」を借りて,自宅でヘビーローテーション.まったくFM802の時代である.買ってもらったKENWOODのCDコンポを大切にした.割と高いものを親にねだってしまったのだけど,こんなけ使ってるんだったら価値があるわ,と母に言わしめた.

岡野史佳

自信がない.末永に「海育ちの風」を借りたんだと思うけど,違っただろうか?

マッキントッシュ

大学二回生のはじめ.いざはじめて「パソコン」を買うとなって,そのとき出ていた月刊誌をざっと集めて目を通した.そこで僕にはマックが必要だ,とかうっかり考えてしまう辺りが,恵文社に出入りするような大学生らしいことである.おかげで計算機の仕組みについてほとんど考える必要がなかったので,学科では大変苦労した.サークルの会誌作りやセッションのポスター,小物作りには活躍した.つまりそれは,僕の立ち位置の中途半端さを決定的にした出来事だった.

ガルフォース

小学生のころ,Sからビデオを借りて見たのだと思う.小学生にはやはり高い買い物だったはずである.Sはモデルグラフィックスを読んでた経緯でガルフォースが好きだった.絵が上手で,当時は園田健一キャラの絵をたくさん描いていたが,年賀状ごとに影響を受けるイラストレーターが変わっていった.弘司とか,山田章博であるとか.彼はそのままイラストレーターになったが,途中で別の才能を見いだされて,今はもう商業で絵を見かけることはなくなった.たぶんまだプライベートではずっと描いてるだろう.彼はずっと絵を描くだろうと思っていたが,彼に影響を受けた僕が,こんなに長く絵を描いているとは予想もしなかった.

フラワーズ

えっ,ぜんぜん判らない.記録を探してみると,なんとなく買ってあったのを2005年2月21日に紐解いたということになっている.なんとなく手に取れるようなゲームだとは思えないんだけどなぁ.まぁ,ラッキーだったということで.

D.C.

こちらも謎が深い.どうして手に取ったのだろうか.なんか今風のちゃんとギャルっぽいゲームを一本,とかいう感じではないかと思う.2002年の6月か7月のこと.それが今の雪村杏に繋がってくるのである.

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