DRAGON Magazine

おっと,古紙回収へ出す前に書いておく.

Wikipediaの「富士見ファンタジア文庫」の項が微妙だったので補足したくなった.ドラマガの創刊(1988年1月30日)はファンタジア文庫創刊(同年11月)の半年以上前.雑誌が文庫レーベルに先行する,という形はちょっと珍しかった.また.ファンタジア長編小説大賞の応募要項が創刊号誌上に載っているが,扱いは小さい(1/4ページ).ジオラマ,コスプレ,アニメセル,イラスト等々のヴィジュアルがウリだったので,自然,そこは小さくなったんだろう.

あともう一つ補足が必要な気が(勝手に)してるのだけど,創刊号における水野良の「ファーラムの剣」は後のソード・ワールドRPGのための世界というよりは,汎用世界設定集であるがごとく間口を広くとって始まる.1988年というのはウォーロック・ワールド開始の翌年,堀蔵人の魔法王国シムルグント*1が刊行された前年に当たる.先行する小説やゲームシステムを持たない(または少ない)ファンタジー世界の設定を詳細に紹介する,雑誌ならば読者からの投稿を参考にしながら制作してゆく,というのはそう珍しいことではなかろうけど,この頃ちょうどそういうのが集中していた.ウォーロック誌上では世界設定をある程度埋めた後,T&Tに追加ルールを付ける形でのシステム作成,舞台(セル・アーネイ)を用いた小説(神月摩由璃「幾千の夜を超えて」)執筆へと続いた.ファーラムの剣の場合,記事に登場する数値は後に発表されるシステム準拠であったが,今後の展開としてどうなるのか誌面では特定されなかった.「ゲームブックやRPGルールに発展していくのは当然として,読者の皆にももっと遊んでもらいたい.」ということで,フォーセリアの設定は募集された.ゲームブックへ発展するのが当然視されるあたり,時代を感じさせる.*2

ファーラムの剣は天野喜孝をメインヴィジュアルに据えていたこと,大きな歴史の枠組みが示されたこと,未来の破滅的な事件(アトン)が示唆されたことからも,当初エピック・ファンタジーの香りがあった.山本弘のスチャラカ冒険隊にしても草〓琢仁は同路線のファンタジーイラストレーターであったが,結果としては草〓琢仁の絵柄のほうがリプレイの影響で丸いものへ変わっていった.

*1:汎用のファンタジー世界設定集.昔持っていたが,もう内容は覚えていない.汎用ではあったが,国産第2号のRPG「フォーリナー」の舞台として用いるものという認識があった.あとシムルグント自体がBEEP誌に連載されていたものと僕は勘違いしていたが,いまネットをぐるぐるしてみるとどうやらシムルグントを背景としたMOON DANCERという小説が連載されていたようだ.このMOON DANCERがシムルグントに先行する.

*2:ロードス島戦記の小説版は1988年4月発売であるため,ファーラムの剣の開始よりも後になる.参考まで.

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