桜はどこへ行った?

桜の雨が舞う,がアニメD.C.ファーストシーズンのEDで,桜雪の舞う,がゲームD.C.IIのOP.アニメのほうは春から始まる明るい話なので*1桜をたくさんの雨粒に見立てた鮮やかな光景.後者は喩えでもなんでもなくて,雪と桜がいっしょに舞う歪んだ季節の話なので見たままを唄っている.アニメのD.C.IIについては雪の季節じゃない時点で続編があると気づくべきだったね.

朝5時か6時くらいに加茂街道を自転車でゆくと,道半ばでタクシーが土手に寄せて止まっていて,ドライバーが写真を撮っていた.ちょうど東山に朝日が昇り始めて賀茂川の桜がさわやかに輝いている.

風が強い日にはうちの玄関まで桜が舞い込んでいる.舞い込むところを見たわけではない.玄関に花びらが一枚,落ちていた.

僕はいつもうつむき加減だから,それは舞い散る桜の姿をあまり見ない.それ散るといえば久々にOPを見たら,女の子が順番に恋を語る姿に再び強いものを感じた*2.恋,恋,恋.僕はうつむいて桜を見送る.

桜のゆくえについては夏本さんが綺麗にまとめて(?)くださったので,僕の方ではもうすこし背景めいた話をしたい.何かを見立てるというよりは僕が間近に見た景色の話.

桜が水に流れるのは細い川筋に限る.あるいは人工の水路.つまり,自然の砂州が小さくて,岸辺と水との境界がくっきりとしているところ.桜の樹のすぐ傍に水が流れてなくてはならない.そういうわけで土手の広い鴨川では桜が流れにまで届かない.いっぽう疏水路ではぜんたいに桜が流れやすくなっている.

鴨川沿いの桜を独りで見るのは朝早くか夕方寒くなってからになる.昼間は人が多い.

去年,幾らかひとが集まって河原で花見をしたのだけど,風が強くて,桜からも遠くて,地面は傾いていて,薄暗いところで身を縮こまらせながら時を過ごした.先週,そのときのことを話題にしたら,あれは慣れない人たちがやった花見って感じだったと言われて,慣れない人たち,のあたりが腑に落ちた.花見で大騒ぎするというのは誰にでもうまく出来ることではない.

独りで桜を見て回るのは気が軽いと思う.だけど,もしかしたらこれも誰にでもうまく出来ることではないのかもしれない.だとしたら僕は幸運だ.

それで,独りで見るならば自然,疏水路のほうに足が向く.

僕は4月1日に限らず嘘・大げさ・紛らわしいのでかえって4月1日には何を書いたらいいのか判らなかったくらいであるが,先日,その桜の流れない賀茂川を散歩していたら,桜の代わりに鴨が流れているのを見た.これによって下流では鴨川と呼ばれるのだ.沿岸の砂州の辺りは水の流れが遅いため鴨たちはめいめい好きな方を向いているが,川の中央では流れが速いため,鴨たちは揃って上流を向く.僕のほうでは判らないが彼らは水面下で足を激しく動かして,その場に留まっているのだろう.時折,くちばしを突っ込んで何か捕っているのは漁師が長靴で立つ姿にも似ている.川が流れる方へ体を向けるとどこまでも流されてしまうので,彼らは下流へ移動するときにも上流を向いたまますっと力を抜く.するとカッパではないが鴨が川に流されているようなほほえましい絵を見ることができる.

*1:よって終盤はEDが変わる.

*2:同窓会のマニュアルを彷彿とさせるパワーなので,これは水姫にお勧めと思った.

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