こよみディテクティブ

僕の探偵に関する知識はまったく偏っていて,だいたいは京都の人々であって,第一には「二の悲劇」の法月綸太郎,次に「夏と冬の奏鳴曲」のうゆーさん,それでもって「クビキリサイクル」のいーちゃんが続く.探偵というか後ろの二人は語り手だけど,きっと似たようなものだろうよ.*1,*2

探偵は当事者の事情に対して外からやってくる,あるいは後からやってくるものである.それで京都に住む探偵にとって当事者とはいつも女の子であって,探偵は女の子の周りで起こっている事態について間違っていたり,たどり着けなかったりして,やりきれない気持ちを抱えるか,あるいは記憶があいまいになって気持ちを抱えることすら許されないか.京都の探偵小説って恋愛小説のようで,だけど,可憐な彼女たちに対してどうしてこうもやりきれないことになるのかと思い始めていたところ,いーちゃんは,玖渚にたどり着いてくれた.玖渚友が命を落とさなかったこと,クビキリサイクルでいーちゃんが玖渚友までたどり着けたことは,すごく大事なことだと思ってる.僕にとって西尾維新とは男の子が女の子のところまでたどり着ける作家だった.

ところでいま,くびきリサイクル,という題を思いつきました.つまりは化物語のはなし.男の子が女の子のところまでたどり着けるお話が満載で幸せ.

阿良々木くんが事態に対して遅れてしまったこと,手が届かなかったことを悔やむのは化物語全体を通して続くことで,彼はそのために,女の子のために奔走する.忍のこと.ひたぎの所作や過去について誤解していたことのいちいちの振り返り.だけど,彼は最終的には女の子に追いついている.追いつくことのできる仕掛け,武術における特殊な歩行法みたいな,瞬間,距離が詰められているみたいな,これは女の子との距離についてのトリックのお話だ.つばさキャットで阿良々木くんが町中を駆け回ったあげく忍が隠れていた場所はその最たるものであるが,いや,これ,普通に恋愛小説って言っていいのだけど,探偵小説を経由してしか恋愛を語れない不器用な京都人たちの,最後のランナーが阿良々木くんなのかな.アニメ版はこういう面倒な経由地をもたず,阿良々木くんがひたぎの所作や過去についての勘違いに悔やんだりしない,もっとストレートな恋物語になっている.

なお,走るとか追いつくとかいう言い回しについてはこちらを参照のこと.ttp://d.hatena.ne.jp/imaki/20051001#p2

あと,月に兎がいること,海があることへの阿良々木くんのこだわりかたが気に入っています.以下,ひたぎクラブより,

「・・・(前略)・・・なんで月に兎がいるか,知ってるか?」

「月に兎はいないわ.阿良々木くん,高校生にもなってそんなことを信じているの?」

「いるとして,だ」

あれ,いるとして,じゃないか?

いたとしたら?

何か違うな…….

いるとして,ではしっくりこないのである.月に兎はいるとしか思えないのだ.みたまんま.このひとの文脈がよほど整理されてる様子は,まよいマイマイにも出てくる.

「一周して,メタ的な悩みになっているわけね.鶏が先かひよこが先か,みたいな感じだわ」

「それはひよこが先だろう」

観念的な操作とかメタとかない.みたまんま,ひよこが先だろう,である.阿良々木くんに惚れる! この阿良々木くんであればこそ蟹は見えないのであるし,蟹という文脈にまみれた戦場ヶ原にとっては外からやってきた異星人の恋人だったろう.「姑獲鳥の夏」で言うところの榎木津.ただし,阿良々木くんはこのあと八九寺と出会ってから,戦場ヶ原や関口くんみたいに文脈にまみれてものを見ることになる.二十箇月もの間子供を身籠っていることができると思うかい.

近い遠いじゃないんだよ.見える,見えないで化けて出てくるゼロ距離恋愛小説.

大好きだわ.

化物語(上) (講談社BOX)

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化物語(下) (講談社BOX)

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化物語 第一巻 / ひたぎクラブ【完全生産限定版】 [Blu-ray]

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小説の「化物語」読んで,その後でアニメ1巻を見た感想ですよ.

*1:ttp://imaki.hp.infoseek.co.jp/r0210.shtml#12

*2:ttp://imaki.hp.infoseek.co.jp/old/g9911.html#28

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