Book Off – a sacred story in the wind – なんつってね.えっと,自分の好きな本を人に勧めて手渡すのって大変じゃない? ラブレター渡すみたいなもんでさ,好きになってもらえなかったときの気まずさを考えるじゃない? だから日記とか好きなんだよね.好きな本は手渡すんじゃなくてどこかに書いておいて,僕に知られずそれが読まれていて僕に知られず愛されていたら,それが最も純粋な恋愛だね,と誰かが唄っていた,と誰かが言っていたような気がする.
いつかのこと,僕の大好きだったCDを彼に貸したらあんま評判良くなくてがっかりしたんだよね.それから数年経って,彼がその曲聴いてるからさ,あれ,あんま好きじゃなかったやん,って言ったら,どうも彼,そのころ改めて他の子から同じCD借りてさ,それで気に入ってさ,だけどむかし僕から借りたことなんて忘れてたんだ.いつ誰からどういう気持ちのときに受け取ったかで変わるものでさ,賭ですよ.そういう暴挙に出れるのは頭が真っ白になってるときくらいだ.
起きてたついでに Looking-glass Insects の素晴らしき日常ENDのほう.それ以上進む元気はまだあまりない.そもそも僕は「敵を倒す学問は化学と物理のみ!」という大変根暗な煽り文句に惹かれてこのゲーム始めたのでこっちは楽しみにしてたんだ.
ここで屋上の間宮くんが自分の好きなシラノの本をさらっとざくろさんに貸しちゃうでしょ.大ショックですよ.これが女たらしというやつですか.まぁ,そっちはよくて,むしろ受け取ったざくろさんのほうの反応.
秘密基地の間宮くんはあのままいってたら自分の好きなラノベをざくろさんに貸そうとしてたと思うんだよね.だけどその前にざくろさんは逃げ出しちゃう.一方で屋上の間宮くんのほうはざくろさんにとって何かいい感じだったんだと思う.だいいち天気がよい! 風が涼しい! 見晴らしがよい! となれば,仮に屋上と地下の間宮くんが同じだったとしてさえ,屋上のほうが何かいい感じに思えても無理はない.そして逃げるべき相手と一緒にいるべき相手の判断が先行して,その後に本を受け取ったり,本を透かして持ち主のことを考えてみたりといった交流が始まるんだよね.いつ誰からどういう気持ちのときに.ざくろさんも秘密基地の間宮くんのことが最初はいいと思ったんだ.なんかちょっとしたことがね,誰かと一緒にいるかどうかを決めて,そこからようやく始まってゆく.始原のコンテクストというやつはままならぬのだけど,なるべくその欠片を拾って生きてゆきたい.
二ヶ月ほど前のことであります(当時はまだいつもみたいに胃腸の調子が悪いかな,くらいだった).
僕が人と本屋に入るのは話に困ったときかもう少し一緒に居てたい時で,その日もそんな感じで某さんと桜新町の本屋に入ったとき,のことだったと思う,「シチリアを征服したクマ王国の物語 」という本を見つけてね*1,

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タイトルの時点でけっこうくるものがありますが,挿絵もすごいクマクマしていて可笑しいのでした.本の思い出というのはそんな風に.いつ誰からどういう気持ちのときにっていうのはそういう欠片を集めた先に我知らず浮かび上がってくる.
間宮くんがジャンニ・ロダーリというイタリアの作家を紹介するので,もしかしたらこの本の作者だったかなぁと思ったのでした.作者も題名も覚えてなくてね.調べたらロダーリという人はそれらしい本を書いてなかった.そうしたら間宮くんはイタリアの作家をもう1人,今度はブッツァーティという人で,こちらがビンゴ.びっくりしました.
いつ誰からどういう気持ちのときに.シラノ,ロダーリ,ブッツァーティ.
先日いってたマーマレードの空き瓶もアリスだってちゃんと説明があったね.
そういうの集めて生きてる,素晴らしき日々.

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- 作者: ジャンニロダーリ,関口英子
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*1:それは去年の11月のマイマイ新子のときではないか,とご連絡を受けた.そうだった気がする.